業務上の事故による怪我や業務上の原因による病気により、障害等がのこり、介護が必要になる場合があります。そうなった時に、一定の要件を満たせば、介護に要した費用などを労災保険から介護補償給付として支給を受けることができます。
労働者が業務上負傷し、又は病気にかかり、その結果、障害等が残ると、介護が必要な場合も数多く発生します。労災による傷病の場合には、そういった介護にかかる費用までが保険給付の対象となります。
労災保険から介護補償給付を受けるには、まず、労災の被災労働者が傷害補償年金又は傷病補償年金の受給権者でなくてはなりません。労災事故などにより障害が残った場合でも、傷害補償一時金の対象となるような軽い障害では、介護補償給付の対象となりません。
さて、傷害補償年金は、労災の被災労働者が、傷病の治療を受け、これ以上治療を続けても治療の効果が期待できない状態になった時(治癒といいます。)に、労働者災害補償保険法施行規則で定める障害の第1級から第7級に該当する場合に支給されます。
一方、傷病補償年金は、労災の被災労働者が療養の開始後1年6ヵ月を経過して時点で、傷病が治癒していない場合(すなわち、まだ治療により状態の改善が期待できる場合)で、傷病の状態が労働者災害補償保険法施行規則に定める等級の1級から3級に該当する場合に支給されます。
次に、介護補償給付を受けるためには、常時又は随時介護が必要な状態であり、かつ、常時又は随時介護を受けている必要があります。常時又は随時介護が必要な状態でも、現に介護を受けていない場合には、介護補償給付は行われません。
さて、常時介護が必要な状態とは、障害や傷病にて日常生活の用を弁ずる能力を欠く場合などです。随時介護が必要な状態とは、障害や傷病にて日常生活の用を弁ずる能力を著しく欠く場合などです。介護補償給付を受けるためには、上記の①と②の要件を同時に満たす必要があります。
介護補償給付は月を単位として支払われます。介護補償給付の受給要件を満たす被災労働者に対して、現実に介護を行った日があれば、その日が属する月には、介護補償給付が行われます。
この介護補償給付の金額は、職業看護人などに介護を依頼する場合には、常時介護の場合には月額104,290円を上限に実費が支給されます。随時介護の場合には、52,150円を上限に実費が支給されます。
また、職業看護人に介護を依頼するとともに、親族らも介護を行った場合には、常時介護にかかった1月あたりの金額が56,600円を下回る場合には、56,600円が支給されます。実費が56,600円から104,290円までの場合には、実費が支給されます。104,290円を超える場合には、104,290円が支給されます。
同じく、職業看護人に介護を依頼するとともに、親族らも介護を行った場合で、随時介護にかかった1月あたりの金額が28,300円を下回る場合には、28,300円が支給されます。実費が28,300円から52,150円までの場合には、実費が支給されます。52,150円を超える場合には、52,150円が支給されます。
介護補償給付の受給要件を満たす被災労働者に対する介護を、職業看護人に依頼せず、親族のみで介護を行う場合があります。この場合には、常時介護の場合、一律に56,600円が支給されます。常時介護の場合には、28,300円が支給されます。
なお、被災労働者に対して親族のみで介護を行う場合には、介護を行い始めた最初の月は、介護補償給付は行われません。介護を行い始めた日が属する翌月から介護補償給付が始まりますから注意が必要です。
介護補償給付を受けたい場合には、障害補償年金の受給権者の場合には、傷害補償年金の請求と同時に又はそれ以後に、傷病補償年金の受給権者の場合には、傷病補償年金の支給決定後に、介護補償給付支給請求書を管轄の労働基準監督署へ提出します。
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