悪いことをして叱られているにもかかわらず、まったく反省の態度が見られない。
そんな我が子を前に、「一体、いつからこんな子に?」と首をひねるママは多いことでしょう。
その疑問に対する答えはズバリ、「3歳までにこころが伝わる脳を育てられたかどうか」にかかっています。
「こころが伝わる脳」とは、読んで字のごとく、相手の気持ちを理解し、心を通わせる能力のことです。実は0歳から3歳までの、ママの我が子に対する接し方ひとつで、この能力は決まってくるのです。
「もう手遅れじゃない?」と思った方、ご安心ください。たとえ時期が遅れても、脳が育つしくみを理解、実践することで、十分取り戻すことができます。
人間の脳神経細胞には、「仲間でありたい」という根源的な本能が宿っています。育脳のファーストステップでもある、こころが伝わる脳は、この「仲間でありたい」という本能を刺激することによって鍛えられ、育まれていきます。具体的にいうと、ママは子どもと同じ目線で共感の姿勢を示し、子どもの仲間になることです。
ところが多くのママは、「子育て=教育」という概念が強く、「ああしなさい、こうしなさい」と教え諭す側にまわってしまいがちです。すると子どもの脳は成長するにつれ、自分の身を守るための「自己保存の本能」を過剰に働かせるようになり、その結果、自分の過ちを素直に認めることができなくなってしまうのです。
そんなときに有効なのは、「子どもの脳に入る」方法です。たとえば、いつまでもゲームをしている子どもに注意をしたとき、「キリのいいところまでいいじゃん!」と反抗されたとしましょう。
そんなときのママは、自分の感情はグッとがまんです。「キリのいいところまでやりたいよね。でも、宿題の時間がなくなるよ」と、子どもの発言と同じ言葉を繰り返しながらアドバイスすることに徹します。
説教ではなく、子どもの発言に同意することで相手の脳の入ると、「仲間でありたい」という本能を刺激することができるのです。
ママが子どもと仲間になり、こころが伝わる脳が育まれていくと、親子の脳はつねに同期するという現象が起きますので、お互いの考えが言わずともわかるようになっていきます。
同期とは、相手に自分の気持ちや感情が伝わる脳のしくみのことです。たとえば、子どもが部屋を片づける約束を守らなかったとき、同期している親子の場合、ママの声かけも次のように変わってきます。
「今日は学校で疲れたのね。一休みしたら、片づけようね」。自分を理解してくれる母親の言葉に対して、反抗的な態度に出る子どもはまずいないでしょう。
反対に、こころが伝わる脳が出来ていない子ほど、先に述べた、脳が持つ「自分を守りたい」という自己保存の本能が過剰反応を起こします。
自分が傷ついたり、責められるのを防ぎたいという思いが強くなるため、叱られているときは聞いているフリをする、ウソをつく、果ては逆ギレするなど、あらゆる方法で自分の身を守る行動に出るようになります。
また、こころが伝わる脳が未熟な子は、「自分からやりたい」という、自分の本能も育ちません。自我の本能が育たない原因は、親が子どもの自主性を待てず、「ああしろ、こうしろ」と先回りしてしまう点にあります。
その結果、自主性が十分に育たないまま成長した子どもは、達成能力も低く、成功体験が乏しいです。子どもというものは本来、無条件で母親を受け入れる存在です。
しかし、「自分で考え、成し遂げる」という、人間が生きていくプロセスのなかで絶対的に不可欠なファクターがジャマされると、たとえ大好きなママの言うことでも、子どもは素直に聞くことができなくなってしまうのです。