貯蓄・投資[67]

投機的な円高に基づく日本株安は長期化しない

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執筆者:青沼 英明

日銀の追加緩和見送りがゴールデンウイーク中も尾を引き、4月28日から5月6日にかけての3営業日で1ドル105円台に6円超円高が進展し、円高による業績悪化懸念を理由に、この間の日経平均は17572円から1466円下落し、6日終値は16106円となりました。 

こうした中での私の見解は、「投機的な円高に基づく日本株安は長期化しない」というものであり、その転換点は早ければ決算発表シーズンが一巡して、悪材料出尽くしとなる5月後半頃になるのではないかとみています。

今後の追加緩和期待が、再び円安・株高シナリオに繋がる

「投機的な円高に基づく日本株安は長期化しない」と考える理由としては、日銀の追加緩和見送りが今回の急激な円高株安の主因だとすれば、「日銀は追加緩和を温存したに過ぎないとの理由で、今後の追加緩和期待は強まり、再び円安株高シナリオを想定しやすくなる」ためです。

そもそも、投機筋は追加緩和の効果など吟味することなく、金融政策の先読みでひと稼ぎしようとした結果であることは手口から明らかであり、日本取引所グループ社長が「市場(投機筋)は勝手に期待して、空振りして、コケた」とのコメントが象徴していると言えます。

また、原油価格の回復に伴い、株価も世界的に上昇に転じるなか、投機的な結果としての円高を理由に日本株を売るという論理には限界があり、株価や為替の振れであるボラティリティが収益源の投機筋にとっても、ここからの円高株安が鈍ってくれば、決算発表一巡後の悪材料が出尽くしたタイミングで、「円売り・日本株買い」の行動を取る可能性があるとみています。

年初から乱高下する原油価格や為替、株価、さらには日米欧の金融政策を読み切れず、今年第1四半期も世界のヘッジファンドのパフォーマンスが低調であることは、思惑だけで乱高下する相場からの脱却時期が近づいているとも考えられます。

今後2~3カ月内に日経平均18000円台回復の可能性は十分にある

今後の日本株相場を占う上でのポイントは、追加緩和が温存されたに過ぎないとすれば、今後の追加緩和期待で「円安業績改善株高」の流れを作り出せるかどうかにあります。

今回の急激な円高株安の一因として、これまで日銀がサプライズを起こそうとして市場にうまく政策判断を伝えてこなかった副作用が出たとの見方は否定できませんが、この点については今後の「市場との対話」を修正することで解決可能なことです。

当然、ここには米国の経済指標に基づく利上げの有無が絡んできますが、米FRBが利上げを続ける一方で、日銀は金融緩和を続けるという金融政策の違いは健在で、円安ドル高要因であることに変わりありません。

決算発表シーズン中の急速な円高で、輸出関連企業は1ドル105~110円前提の業績計画を立てざるを得ませんが、一方で今後円安に向かえば業績増額による株高要因となります。

仮に1ドル105~110円で推移したとしても、企業として利益を出すための損益分岐点の引き下げ努力は当然であり、今年2月の内閣府のアンケート調査によれば、現時点でも主要上場企業の輸出採算は1ドル101~103円の円高でも耐えられることが公表されています。

以上の結果、引き続き米国の利上げや日銀の追加緩和のタイミングに注意を払いながらも、世界的な投資環境の改善で、日本株の上向きのトレンドに変わりはなく、今後2~3カ月内に日経平均18000円台回復の可能性は十分にあると思われます。

 

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貯蓄・投資総合ランキング2024/11/20 更新

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