貯蓄・投資[67]

日本株反転のポイントは「リスクオフの円高」に歯止めがかかること

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執筆者:青沼 英明

年初からの世界同時株安を2カ月終了した段階でみると、日経平均の下落率は▲15.5%と、世界の主要25株価指数平均の▲5.4%を大幅に上回る下落率となっています。

この主因は、年初から世界景気のマイナス面ばかりがクローズアップされるなか、海外投資家を中心に景気変調の影響を受けやすい日本株を手放す動きが強まったほか、こうしたリスクオフ時に円高が進展するメカニズムが、日本株の下げに拍車をかけたものと思われます。

したがって、3月以降の日本株反転のポイントは、この「リスクオフの円高」に歯止めがかかることであり、多くは今後の米国景気の回復と日米の金融政策次第と言えます。
 

現状は相場の鉄則が機能していない

1月14日の前回コラムで、「日米欧の経済環境は良好なだけに、中国の景気減速懸念や原油安が落ち着きを見せれば、投機筋の買戻しに伴い、他の投資家の投資マインドも改善し、早ければ2月までに、日経平均は19500円程度に達する」とみていましたが、3月1日時点で16085円と年初から約2950円、率にして▲15.5%の水準にとどまっています。

こうした年初からの市場の低迷に対し、2月27日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議では、「最近の市場変動の規模は、世界経済のファンダメンタルズを反映していない」と指摘した上で、「各国が金融政策に加え、財政政策、構造改革などすべての政策手段を用いる」とし、共同声明に投機筋をけん制する異例の文言が盛り込まれました。

ただ、これらは裏を返せば、「株価は短期的に需給、長期的にファンダメンタルズで動く」「中央銀行に逆らうな」という相場の鉄則が、これまでのところ機能していないことを示しています。

こうした背景には、市場の懸念が当初の「中国の実体経済が悪いから人民元や原油が急落しているとの見方から、「投機筋主導による金融市場の悪化が、今後の世界経済に悪影響を及ぼすのではないか」との見方に変わってきていることにあると思われます。

もしそうだとすれば、投機筋の過度な動きを止める政策をとることで、実体経済への不安が薄らぎ、日欧のマイナス金利で膨らむ緩和マネーを市場に取り込むことが可能となります。 

バリュエーションからの当面の予想レンジは15500~18400円

投機筋の過度な動きは、原油や各国の為替、株価など広範囲に及びますが、3月以降の日本株反転のポイントは、「リスクオフの円高」に歯止めがかかることであり、多くは米国景気の回復と日米の金融政策次第と言えます。

昨年までは日銀の金融緩和政策が奏功し、リスクオンの円安株高が進展しましたが、今年2月以降の米国景気の減速懸念に伴う急速な円高は、結局ドル円の主導権が米国景気とFRBの利上げの動向にあることを示したものと思われます。

ここにきて米国の景気指標は改善傾向にあり、中期的に米国は金利を引き上げる政策をとり、日本はマイナス金利にみられるように金利を引き下げる政策により、日米金利差は拡大する方向に変わりないため、今よりも円安ドル高傾向になると思われます。

また、最近の「円買い→日本株売り」を行う投機筋の動きは、「米国経済指標の悪化→金利引き上げ困難→日米金利差縮小→ドル安円高→日本株売り」との米国の金利の引き上げを巡る解釈に基づくものであり、リスクオフのシナリオに乗り過ぎた状態とも言えます。

こうしたなか、3月以降は日欧の追加緩和期待に加え、マイナス金利に触発されたキャッシュリッチ企業の自社株買い、銀行の株式への投資拡大、さらにはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のリバランスによる株購入などが日本株の下支え要因となり、個人投資家にも買い安心感が広がると予想されます。

以上の結果、バリュエーションからみた当面の予想レンジは、直近で下方修正された会社予想ベースの日経平均の今期1株利益1150円に、リーマンショック後の平均PERレンジ13.5~16倍を当てはめた15500円~18400円とみています。

 

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貯蓄・投資総合ランキング2024/11/20 更新

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