昨年末に19033円で終了した日経平均は、年初から6日連続安で17219円まで下落し、この間の下落幅は1815円に達する波乱の年明けとなりました。
年初からの世界同時株安は、中国の景気減速懸念と原油安がリンクしているほか、サウジとイランの国交断絶、北朝鮮の水爆実験というネガティブサプライズが重なったものですが、需給面からは中東オイルマネーの資金引き揚げや投機筋による需給主導で下げ足を速めた可能性が高く、市場が冷静になれば現在の良好なファンダメンタルズを反映して、株価は上昇に転じると思われます。
前回のコラムで、2016年は増額修正期待が強まる決算発表シーズンまでが、日本株の利益獲得のチャンスと考え、日経平均は2月中に21000円程度を想定していましたが、出鼻を挫かれる結果となりました。
ただ、今回の株価急落の主因は、いずれも海外発であり、その中心の原油安や中国の人民元安も、投機筋による仕掛け売りが主導で下げ足を速めた可能性が高いと推測されます。
市場は、中東と北朝鮮の軍事リスクにさほど懸念していないため、当面の焦点は中国政府やOPEC諸国が人民元安と原油安を止めるための政策を取れるかどうかにかかっています。
13日にようやく、日経平均は7日振りに497円高の大幅反発となりましたが、きっかけは前日に中国人民銀行が本土外のオフショア市場で、異例の大規模な元買い・ドル売り介入を実施し、投機筋に大幅な元安を認めない方針を明確に示した要因が大きいと思われます。
為替介入のための外貨準備高は世界一の3兆3300億ドルあり、良くも悪くもトップダウンの迅速な政治判断が可能なことから、投機筋も売り込みにくくなるでしょう。
また、そもそもメディアが騒ぎ立てるような中国の景気減速を裏付けるデータはなく、ノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツコロンビア大学教授も、「中国で起きていることはゆっくりとした減速のプロセスであって、劇的な変動ではない」と分析しています。
一方、原油安については、アメリカやロシアなどの生産国を巻き込んで、誰も儲からない状況から抜け出す政策が必要となりますが、12日にはOPEC加盟の数カ国が、原油価格下落に歯止めをかけるための臨時総会の開催を要請したことをきっかけに、指標となるWTI原油先物市場で5割の売買シェアを占める投資ファンドの買い戻しも期待されます。
日米欧の経済環境は良好なだけに、原油安や中国の景気減速懸念が落ち着きを見せれば、投機筋の買戻しに伴い、他の投資家の投資マインドも改善し、株価の反転上昇に繋がると予想されます。
日本株は①日銀の金融緩和政策、②円安による海外競争力の後押し、③原油安による企業のコスト負担減、④コーポレートガバナンス強化によるROEの潜在的成長性などで海外投資家から有望視されていることに変わりありません。
バリュエーションからみた当面の予想レンジは、直近で下方修正された日経平均ベースのアナリスト予想平均の今期1株利益1216円に、過去の平均PERレンジ14~16倍を当てはめた17000円~19500円となります。
上値目途は21000円から19500円程度に引き下げますが、今後は企業決算への期待が高まることにより、早ければ決算発表シーズンの2月までに到達するとみています。