[学習全般]「9歳の壁」の意味とは?メカニズムと回避のヒント

「9歳の壁」の意味とは?メカニズムと回避のヒント

2014/01/06

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大人と比べると、子どもたちは覚えるのが得意です。
いつのまにかいろんな事を覚えてきます。
 
そして子どもたちは、好きなアニメのビデオや本を何回も繰り返して見たり読んだりします。
 
大人はそれを見て「飽きないのかな?」と思います。
 
ある日、子どもが何かブツブツ言っているのをよく聞くと、あるアニメ映画のセリフだったりします。しかも、その映画の最初から最後まで、すべての登場人物のセリフを一言一句間違えずに。
 
親はそれを見て「うちの子は天才!」と喜びます。
 
そこで、その子どもに「右脳教育」や「英会話」、さらに計算のパターン練習ばかりやらせる学習教室などに通わせて就学前の先行教育をはじめます。子どもは親の期待に応えようと頑張って、習ったことを親の前で披露し、親もそれを見て聞いて大満足。
 
ところが、小学校3年生くらいから様子が変わります。

「天才」だと思っていたわが子の成績がみるみる落ち込み、それに伴ってやる気も落ちてきました。

算数ではあいかわらず計算はできるのですが、文章題ではトンチンカンな式を立ててミスばかり。あわてて親は塾に行かせることを決心しました。
 
「うちの子は計算はできるのですが、文章題が苦手です。読解力がないからだと思うので、算数だけでなく、国語もやらせたいのですが・・・」
 
塾の入会面談で訴えます。
 
よくある話です。
 
実は、子どもたちはみんな、生まれてから9~10歳までに、その生まれた環境に適応するためにいろいろなことを素早く吸収する能力をもっています。「暗記力」もその一つです。
 
しかし、子どもたちの能力は「暗記力」だけではありません。

「思考力」、つまり考える力です。
 
身の周りで起こっていることを自分なりに解釈し、抽象的にイメージして考える力も備えて生まれてきます。
 
9歳までにこれらの能力を発達させるプログラムをもって人は生まれてくるのですが、このプログラムに逆らって幼少期に先行教育やパターン学習ばかりさせると極端に「考える力」が衰えてしまうのです。
 
これが「9歳の壁」といわれる現象です。
 
10歳を過ぎると脳の神経系は大人とほぼ同じになるので、そこから「思考力」を磨くのは難しくなってきます。「やり方」を覚えて、意味を理解しないまま計算のパターン練習をしても、その計算を応用することができません。
 
「分数」や「小数」などが出てきて、計算問題も複雑になってくると、得意だった計算さえできなくなってしまいます。逆に、理解して納得できないとなかなか進めず、一見勉強ではパッとしないように見えた子が、小学校高学年あたりからどんどん伸びてくる、といった例は少なくありません。
 
目先の結果にとらわれるより、じっくりと「思考力」を伸ばしてあげた方が、それほど遠くない将来、大きな花を咲かせるのです。

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