「聞く」と「話す」は表裏一体です。話し上手の人は同時に聞き上手ですし、聞き上手の人は話し上手です。それを証明するかのような、こんなエピソードがあります。
「話し方教室」に通いはじめたおしゃべりな女性がいました。これ以上おしゃべりになるのではと心配するご主人をよそに、教室に通いはじめて3ヶ月ほどでその女性はあまり話さなくなったといいます。
ご主人は不思議に感じていますが、これは不思議でもなんでもありません。女性は聞き上手になったのです。
おしゃべりな人が聞くことを覚えると、一方的に話すのではなく、相手の話を聞いて的確な受け答えができる話し手に変わります。
聞くというのは人間関係の基礎です。コミュニケーションの原点です。話すのは苦手だけど聞くことはできると思い込んでいる人がいますが、これは大きな誤解です。聞くというのは黙ることではなく、相手への働きかけです。ママの聞き方次第で、子どもは、変わるのです。
最近はあまり反応しない若者が増えているそうです。研修の講師などが若い人たちの前で話すと反応がなく、話がおもしろくなかったのかと思ってアンケートをみると「先生のお話、とてもおもしろく聞きました」と書いてくれていたりするそうです。
それなら、うなずくとかあいづちを打つとかメモをとるなどすれば、講師も話しやすくなるでしょう。講師も反応がないと話す気が失せてしまうのではないでしょうか。
話したくなるように聞ければ、会話が活発になります。家庭でも、子どもが話したくなるように聞いてみてください。そうして聞いてもらった子は、聞き上手、話し上手になります。
子どもが聞き上手になるためには、聞いてもらってうれしかった、という体験が必要です。それにはまず身近な親が聞き上手になることです。
ところが、子どもの話というのは、まとまりがなかったり、言葉がすっと出てこなかったりします。でも親が上手にリードしてあげることで、上手に話せるようになります。
口の重い子から話を上手に聞き出した素敵なママがいます。息子さんは小学2年生です。「今日帰りにね」と珍しく自分から話しかけてきました。ママはそばによって「帰りに何かあったの?」と聞くと、その子は「蜂が…」と言って次の言葉を探していました。
黙って子どもの様子を見守っていると「公園の脇道…」と言いました。ママは「いつもの帰り道よね」と話をそれとなく促すと「急に飛び出してきたんだよ、こんな大きな蜂が…・びっくりしちゃった」「ママだってびっくりしちゃうね」「どうしていいかわからなくなって」「そうだね」と会話が続きます。
蜂が怖かったけど、向こうから車が来たから、車にひかれたら大変と飛びのいた。そうしたら蜂もどこかに行ってしまった、という怖い思いを精いっぱい話しました。ママは「頑張ったね」と思わず抱きしめたといいます。
途中、ママは結論を急いでほしくて少しイライラしてしまいましたが、待ったそうです。話を促したり、共感したりして子どもが話せるようにしたのでした。
このママの上手なところは、子どもが言いたいことを話せるように、途中で話を整理したり、それとなく先を促したり、共感したりしている点です。でも何よりいいのは話を急かさないことです。ママが急かすと、子どもはわれ先に話をするようになります。自分が話すことだけ考えているから、人の話を聞けなくなるのです。
上手に聞くと、子どもが自分で結論を出すこともあります。宿題が大変でできないという子に、「学校は宿題を出すところだ」と言ってしまうと話はそこで終わりになります。
でも、「そう大変なんだ、どのくらいあるの?」「こんなにあるよ」「ほんとだ、どうするの?」「だってやらなきゃしかたないよ」と自分で答えを出します。子どもは大変だということを共感してほしいのです。
共感してくれる人がいると、やらなきゃという自覚が生まれます。子どもの話は子どものものです。親が自分に引き寄せて意見したりする必要はありません。
教育総合ランキング
2024/11/20 更新