健康保険の被扶養者になると、保険料を負担することなく健康保険から保険給付を受けることができます。その意味では、大変お得な制度といえるのですが、誰でもこの制度を利用できるというわけではなく、健康保険の被扶養者になるためには、一定の要件を満たす必要があります。
被扶養者となるためには、様々な要件を満たしていなくてはなりません。まず、被扶養者となるには、被扶養者になろうとする者と被保険者の間に法律で決められた一定の関係がなくてはなりません。
この法律上の関係とは、まず、被扶養者になろうとする者が、被保険者の直系血族(父母、祖父母など)、配偶者(内縁も含む)、子、孫及び弟妹である場合には、被扶養者になろうとする者が、被保険者によって主として生計を維持されていなくてはなりません。
生計を維持されているとは、扶養認定の対象者が、主として被保険者の収入によって生活している状態をいいます。例えば、高校生以下の子供の場合、親の収入によって生活しておりますが、このような場合は、その子供が親によって生計を維持している状態といえます。
一方、①主として生計維持の条件によって扶養認定を受けることができる親族、すなわち、被保険者の直系血族、配偶者、子、孫及び弟妹以外の3親等以内の血族、②内縁関係にある配偶者の父母及び子、③配偶者の死亡後のその配偶者の父母及び子、である場合も健康保険の被扶養者になることができます。
ただし、この場合には、被保険者によって生計を維持されているという要件の他に、住民票上で同一世帯に属しているという要件を満たしている必要があります。ですから、被保険者から比較的血縁上の関係が薄い者を被扶養者に認定するためには、より厳しい要件が課されています。
ですから、例えば、被保険者の親や子であれば、一緒に暮らしていなくても、離れて暮らしている親や子に対して定期的に一定額の仕送りをして、その生活を支えている事実が認められれば、被保険者の被扶養者として認定することが可能です。
一方、被保険者の兄や甥、又は配偶者の父母や子の場合には、たとえ、被保険者が毎月一定額の仕送りをして、その者の生活を支えているとしても、離れて暮らしている限りは、健康保険では被扶養者と認定されません。
さて、生計維持要件や同一世帯の要件の他に、所得要件というのがあります。この所得要件は、被扶養者となろうとする者であれば、誰でも満たしていなければならない基準です。この基準とは、被扶養者になろうとする者の年収が130万円未満(一定の障害者や60歳以上の者の場合には180万円未満)という基準です。
収入がこの基準額を超えるような方の場合には、仮に同居していても被保険者によって生計を維持している状態とは認められないと考えられています。ちなみに、国民年金保険にも健康保険の被扶養者によく似た制度である第3号被保険者という制度がありますが、この被保険者となるための所得要件も同一の基準となっています。
さて、健康保険の被扶養者に該当する場合には、健康保険被扶養者異動届を年金事務所に提出します。この手続きは、一般的には、被保険者が在籍する会社を通して行います。被扶養者の要件に該当し、かつ、健康保険の被保険者になることを希望する場合には、会社に対してこの手続きをするように申込みます。
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