高齢者の介護を社会全体として支え合う仕組みとして、平成12年4月に導入された介護保険制度は、3つの大きな特徴があります。それは①自立支援②利用者本位③社会保険方式 です。
まず①についてですが、介護保険制度が提供する介護サービスは、単に高齢者の身の回りの世話をするというだけではなく、高齢者がその尊厳を保持し、自立した生活を営むことを目的にしています。
②についてですが、従来の制度では、サービス供給主体である市町村が一方的に介護が必要なものが受けるサービスを決定していました。しかし、介護保険制度では、多様な供給主体から自分に適するサービスを提供するものを、利用者が自ら選択して決定できるようになりました。
③については、介護保険制度は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者と65歳以上の者から保険料を徴収し、保険事故が発生した者、すなわち、介護等が必要となった者に対して、保険給付を行うという、社会保険方式を採用しています。
社会保険方式の採用は、介護保険制度が、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みであることを意味します。また、この方式を採用することにより、給付と負担の関係が明確になるというメリットも発生します。
まず、介護サービスを利用しようとする場合、従来の制度では、市町村が提供するサービスを決めていました。しかし、介護保険制度では、利用者が自ら介護サービスを提供する事業者を選択して、サービスを受けることができるようになりました。その分、利用者に自由度が増しました。
次に、従来の制度では、高齢者に関する医療サービスと福祉サービスを利用しようとする場合、その利用者はそれぞれ別々の窓口に申請する必要がありました。しかし、介護保険制度では、介護支援の専門家が利用者のために介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成してくれます。
ですから、利用者は、このケアプランに沿って、福祉と医療を総合的かつ一体的に利用できるようになりました。窓口が別々のために手続きが煩雑で分かりにくくなるという問題はおおいに改善しました。
また、以前は市町村や公的団体が中心となりサービスを提供していましたが、介護保険制度の導入後は、民間企業、農協、生協、NPO等様々な事業者が介護事業に参入するようになり、競争原理が働いて、サービスの多様性や質が大いに向上しました。
最後に、以前は、中高所得者にとって利用者負担が重く、介護サービスが利用しづらいという問題がありました。例えば、世帯主が800万円の給与所得者で老親が月20万円の年金生活者の場合、特別養護老人ホームへ入居の場合には19万円/月、ヘルパーさんを利用した場合には950円/時間の費用がかかりました。
しかし、介護保険制度が導入された後には、所得に関わらず利用者負担額は1割となりました。例えば、世帯主が800万円の給与所得者で老親が月20万円の年金生活者の場合、特別養護老人ホームへ入居の場合には5万円/月、ヘルパーさんを利用した場合には400円/時間程度となり、従前に比べ大幅に安くなりました。
【介護保険①】介護保険制度の導入についてわかりやすく解説
【介護保険③】介護保険の支払いと保険給付についてわかりやすく解説
【介護保険④】介護保険サービスの種類や体系について
【介護保険⑤】介護サービスの手続きについてわかりやすく解説
【介護保険⑥】介護保険の財源構成についてわかりやすく解説