介護保険制度が度入されるまでは、高齢者の介護は、老人福祉と老人医療により運営されてきました。しかし、急速な高齢化の進展に伴い、これらの制度では増加する介護ニーズには十分に対応できない状況となっていきました。
まず、老人福祉についてですが、4つの大きな問題点がありました。それは①利用者がサービスを選択できないこと②所得調査が必要なこと③サービスが画一的になりやすいこと④中高所得者にとって重い負担になること、です。
まず、①についてですが、老人福祉法による介護サービスは町村が提供するため、サービスの種類と提供機関を市町村が決めるため、介護が必要な高齢者が自由にサービスを選択して利用することができないという問題点がありました。
②については、市町村が提供するサービスの利用にあたっては、所得調査が伴いました。そのため、利用者がプラーベートなことを外部から調査されるために、心理的な抵抗感があるという問題がありました。
③については、市町村が直接または業務委託によって提供するサービスがほとんどであるため、競争原理が働かす、サービス内容が画一的で細かい介護ニーズに対応できないという問題がありました。
④については、高齢者の介護にかかった経費については利用者負担が原則ですが、その利用料が本人と扶養義務者の収入に応じて定められていたため、特に中高所得者層にとって重い負担になり、このことが問題となっておりました。
一方の老人医療について考えます。まず、介護保険制度の導入前は、特別養護老人ホームなど介護を必要な老人にとって必要な施設の数が不十分でありました。また、中高所得者層にとっては、所得に応じて定められる高齢者の介護サービスの利用料が大きな負担となっておりました。
このため、介護が必要な高齢者が、介護を理由として一般の病院に長期に入院するという社会的入院の問題が発生しました。介護費用を負担する側としては、介護施設を利用するよりも一般の病院を利用する方が利用料が安くなるために、このような現象が発生しました。
しかし、介護による入院は、特別養護老人ホームの利用に比べれば、利用者負担は安くともそのために費やす医療費総額ははるかに割高で、医療保険給付の無駄遣いが問題となりました。
さらに、一般病院はもともと病気の治療が目的で設立されていますから、介護を要する者が長期に療養する場としては体制が不十分であるという問題がありました。それは、例えば、居室面積が少ないことや風呂や食堂が不十分である、などといった問題です。
高齢化の著しい進展に伴い、要介護高齢者の増加と介護期間の長期化は一層進展しました。また、核家族化の進行や介護する家族の高齢化など、介護する家族の側にも大きな変化が起こりました。
このような状況下で、時代の変化に十分に対応できなくなっていた、老人福祉と老人医療の両方の制度を整理・再編成することを目的として、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして、介護保険制度が導入される運びとなりました。
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