「仮定法」という言葉を聞いて、どんな単語が思い浮かぶでしょうか?おそらく「if」(もし~なら)が思い浮かぶのではないでしょうか?
「だったら中学で習ってるよ!」と言う人もいそうですね。しかし、高校で出てくる仮定法は、中学で学習した「if」とはちょっと違うのです!そこの理解なくして、高校の仮定法はマスターできません。
ということで、今回は高校の仮定法について話していきましょう。
仮定法というのは簡単に言うと、「ウソをつく」文法です。
つまり「事実と異なることを述べる」ための文法だと思ってください。
それに対して、「事実を述べる」「事実になる可能性のあることを述べる」時は、直説法というものを使います。
中学では「If it is fine tomorrow, let’s play soccer.」という文をやりましたが、「明日晴れたら」というのは可能性として十分にありますよね?降水確率80%であろうと、晴れる可能性は残ってますよね?ですから、中学で学んだifは仮定法ではなく、直説法だったのです。
それに対して仮定法は、例えば男の子が「もし僕が女の子だったら、こんな服は着ないよ」というように、実際には起こりえないことに対して使います。その時は中学で学んだifとは使い方が異なるので注意が必要になります。
「もし僕が女の子だったら」「もし大金持ちだったら」といった文のように、「現在の事とは異なることを言う」ための仮定法を「仮定法過去」と呼びます。
公式を必ず覚えてください。(堅苦しいと覚えにくくなるので、ラフに書きます。例えば過去形は「カコ」、過去分詞は「PP」と書くので、その記号は覚えてくださいね)
公式
:If S カコ~, S would / could 原・・・
(もし~なら、・・・だろうなぁ/できるのになぁ)
注意
:仮定法ではbe動詞はwasではなくwereを使う(ただし、日常会話などではふつうにwasが使える)
(例文)
もし僕が女の子だったら、そんな服は着ないね。
If I were a girl, I would not wear such a cloth.
公式にそのまま当てはめていけば、簡単に書けることが分かっていただけたでしょうか? ちなみに、仮定法過去は「起こる可能性が極めて低いこと」にも使えます。
例えば、普段、トラがあなたに近づいてくる可能性はどれくらいありますか?ほぼゼロに等しいですよね?そのような時に使うと思ってください。
(例文)
もしトラが近づいてきたら、君はどうする?
If a tiger were close to you, what would you do?
なかなか面白くなってきましたか?
今度は「過去のこと」を述べる仮定法です。これもまずは公式から覚えてしまいましょう。
公式
:If S had PP~, S would/could have PP・・・
(もし~だったら、・・・だっただろうなぁ/できただろうなぁ)
(例文)
もし昨日そこに行っていたら、彼に会うことができたのになぁ。
If I had gone there yesterday, I could have met him.
またしても当てはめるだけで答えが書けてしまえましたね。
全ての仮定法が現在だけや過去だけのことを言うわけではありません。時には両者を合わせて使う必要も出てきますね。そんな時は、それぞれの公式の必要な部分だけを使えばよいのです。
(例文)
もし昨日宿題をやっていたら、今頃こんなに困ることはないのになぁ。
→「宿題をやる」については「過去」、「困っている」に関しては「現在」ですから、前半には仮定法過去完了、後半には仮定法過去を使えばよいですね?
If I had done my homework yesterday, I would not be in such a trouble.
なにはともあれ、公式を2つしっかり覚えていれば、全く問題はありませんね。
誰もが持つ「願望」「空想」、これも仮定法を使って表すことができます。やはり公式から覚えましょう。
願望の仮定法
:I wish S カコ~・・・
(今)~ならいいのになぁ
I wish S had PP~(もしくはcould have PP~)・・・
(過去に)~だったらよかったのになぁ
空想の仮定法
:as if S カコ~・・・
(今)まるで~かのように
as if S had PP~・・・
(過去に)まるで~だったかのように
(例文)
英語が読めればいいのになぁ。
→これは現時点でのことを言ってますよね?
I wish I could read English.
(例文)
あの時、英語が読めていればよかったのになぁ。
→これは過去のことを言ってますよね?
I wish I could have read English at that time.
(例文)
彼はまるで全て知っているかのように話す。
→これは現時点でのことを言ってますよね?
He speaks as if he knew everything.
(例文)
彼はまるで東京大学を卒業したかのように話す。
→これは過去のことについての空想ですよね?
He speaks as if he had graduated from Tokyo University.
仮定法の中でもちょっと異色なのが「未来についての仮定法」です。これは「これから先のことで、かつ起こる確率が極めて低いこと」に使うものだと思ってください。
公式
:If S should 原形~ ≒ If S were to 原形~
(万が一~なら、仮に~なら)
これだけ見ると「あれ?If節じゃない方は?」と思うかもしれませんね。そちらに関しては、今まで通りwould/could+原形~を書いていただければOKです。
しかし、注意しなければならない点が1つあります。
注意ポイント
:shouldの時は、主節(if節じゃない方)に「will / can / 命令文」などを置くことができます。
(例文)
万が一、彼が明日来たら、このカードを渡してね。
If he should come tomorrow, please give him this card.
仮定法ではIfがたくさん出てきましたが、これについて一つ重要なポイントがあります。
重要ポイント
:仮定法では、Ifを取ってしまったら、主語と動詞が入れ替わる。
(例文)
If I were you
→Were I you
(例文)
If you had gone there
→Had you gone there
(例文)
If he should come tomorrow
→Should he come tomorrow
(例文)
If you were to go abroad
→Were you to go abroad
これも作業として覚えてしまえばそこまで問題はありませんね。
<~がなければ・なかったら>
これも簡単な公式として覚えてしまってください。
公式
:もし~がなければ(現在のことを言う表現です)
If it were not for ~
= Were it not for ~
= But for ~
= Without ~
公式
:もし~がなかったら(過去のことを言う表現です)
If it had not been for ~
= Had it not been for ~
= But for ~
= Without ~
これはちょっと気を付けてほしい点があります。それは「日本語にだまされない」ということです。上の公式だけを見ると「もしあなたの助けがなかったら、この問題は解けないだろう」という日本語を見て、
If it had not been forを書いてしまう人がたくさんいますが、実際にはこの出来事は現在の出来事ですよね?
ですから、「なければ」と「なかったら」だけで判断するのではなく、実際にその出来事がいつの出来事なのかを考えながら解いていきましょう。
仮定法といえば「If」と考える人がとても多いですが、必ずしもそうとは限りません。中にはIfを使わずにIfのような働きの文を書くこともできるのです。ここではそのいくつかをご紹介いたします。
★Otherwise
:そうでなければ
(例文)
私は駅まで走った。そうでなければ、電車に乗れなかっただろう。
→これは過去のことを言った文ですから、当然後半は仮定法過去完了を使いますね。
I ran to the station; otherwise I could not have caught the train.
これは日本語を聞くと「あれ?仮定法なの?」と思ってしまうかもしれませんが、「実際にするべき時間なのに、していない」という「事実と異なる状態」を表しているのですから、「仮定法過去」が使えますね。
公式
:It’s time S カコ~
(例文)
あなたはもう寝る時間ですよ。
It’s time you went to bed.
これに「そろそろ」とか「とっくに」を付ける場合は、それぞれ「It’s about time S カコ~」「It’s high time S カコ~」などとすれば完成です。そこまで難しくはありませんね。
仮定法はいろんなポイントが出てきますが、1つ1つをしっかり覚えて積み重ねていけば、そこまで難しい単元ではありません。まずは2つの公式を覚えるところからスタートしていきましょう。