受験勉強をする上で、暗記は欠かせませんね。英語ならば単語や熟語、構文を、数学や物理なら公式を、古典なら単語・表現・時代背景を、といったように、覚えることが盛りだくさんなのが大学受験です。
しかし、暗記と簡単に言っても、やり方ひとつ間違えてしまうと最悪の結果を迎えることになってしまいかねません。今回は、より科学的な視点から「記憶」について考えていきたいと思います。
よくテスト直前になって一夜漬けで暗記しようとする人がいますが、これは受験勉強においては絶対に避けなければならないやり方です。
なぜなら、直前にまるごと暗記するというやり方(もちろん直前でなくてもダメですが)、すぐに忘れてしまいやすく効率の良い暗記法とは言えないですし、そういう覚え方は問題を解くという結果につながらないので、結果として意味のない暗記になってしまうからです。
では、どういう暗記の仕方が効率良い暗記と言えるのでしょうか?そもそも暗記はなぜしなければならないのでしょうか?
「暗記すること」が目的なのではなく、暗記したことを利用して、時には組み合わせて、問題の解答を導くためのものですよね?つまり暗記したものが演習力に生かされてくるのです。
夏休み以降はどんどん演習をしていかなければなりませんから、そこで得点をアップさせていくためには、夏休み以前に暗記すべきものは全て暗記しておきたいところですね。
しかし、淡々と覚える作業をしていても単調な作業になってしまいますし、結局はそういう暗記の仕方はすぐに忘れてしまいます。暗記はしっかり定着させなければなりませんし、問題を解けることに結びつくような暗記でなければなりません。次のセクションで具体的な暗記のやり方に触れていきましょう。
記憶というと脳のメカニズムが関係しているので脳科学のような学問を想像するかもしれませんが、実は文系で扱う心理学の専門分野でもあります。
ここでは心理学的なアプローチで記憶というものを考えていきたいと思います。
まず、最初に言えるのは2つです。それは「記憶するべき内容に意味を持たせる」「何度も出くわしたものは記憶に残りやすい」ということです。これは既に実証済みでもあるのですが、あることを記憶するときには何の意味もないものだとすぐに忘れてしまいますが、意味のあることであれば定着のしやすさもアップします。
その意味というのはたとえてみれば「記憶へのとっかかり」ともいえるべきものです。これから覚えようとする内容とその関連知識とを相乗効果で組み合わせて、まとめて意味づけて覚えるようにすると暗記が非常にスムーズにいくのです。
たとえば、背景にある知識や、パターンが類似したもの・反対となるもの、図や表、グラフなどを一つのきっかけにして、そこから枝となる知識を派生させていけば、意味のある内容となり記憶への定着率も高くなります。
心理学では「エビングハウスの忘却曲線」と言われるものがありますが、これは「人間は時間が経過するごとに記憶した内容を忘却してしまう」というごく自然なものです。
そうなってしまう前に、何度も何度も定着作業を繰り返し、記憶を強固なものにしていきましょう。そのときの1つの策としての「意味付け」なのです。
上述したことと一部重複する内容ではありますが、ここで記憶をさらに確実に促すための3つのステップをご紹介しましょう。
それは「記銘(インプット)」→「保持(メンテナンス)」→「想起(アウトプット)」という3段階です。まずは記銘段階から入りましょう。ここは非常に重要な段階で、知識を頭に入れる作業の方法いかんで暗記の成功率は大きく変わってくると言えます。
例えば受験勉強を始めて間もない時期で何からやればよいか分からないというような人は、最初は最低限覚えるべき単語や熟語、公式などを暗記しなければ始まりませんが、やはり丸暗記に頼るよりはゴロ合わせなどで少しでも意味を持たせてインプットした方がのちの定着率は高まります。
そして最低限の知識をためこんだ後で、背景知識や付随する知識を一緒に合わせて覚えていくのです。そこは上述した「意味付け」のやり方が効果的といえるでしょう。
ただでさえ無機質な暗記項目が多い大学受験ですから、1つ1つに無理やりにでも意味を持たせてみてはどうでしょうか?工夫次第で伸びは大きく変わってきます。
そして次に保持の段階です。せっかく意味を付けて頭に入れた知識であっても、人間である以上は当然何もしなければ定着率は低減していき、最終的には記憶した内容がゼロになってしまいます。
記憶した内容は1時間後には50%がなくなってしまうのです。忘れてしまう知識を再度記憶に保持するためにも、記憶という機械をメンテナンスする必要があります。何度も会ったものは自然と頭に定着することを念頭に置いて繰り返し復習しましょう。
英単語でも言えることですが、一度覚えたってどうしてもすぐに忘れてしまいますから、時間をおいて2回3回と繰り返し確認していきましょう。もし何回やってもミスをしてしまうような箇所があるのであれば、何か身近なものにまとめておいて、ちょこっと空いた時間で何回もチェックできるようにしておきましょう。(スキマ時間の有効活用)。
また学校での授業は記憶にとっては良いツールとなります。予習をして授業を受ければ、予習した内容が授業で再びメンテナンスされて、それをさらに復習すれば同じ単元を3回メンテナンスしたことになりますからね。
また、睡眠のメカニズムもうまく使いたいですね。睡眠中は記憶の定着率は低減しないことが実証されているので、夜寝る前に暗記するべきものを暗記し、朝起きてからすぐに復習してみると非常に効率が上がります。
そして最後が想起の段階です。いくら頑張って知識を定着させたとしても、それを上手く使いこなせなければ元も子もありません。それなのに、多くの受験生はインプットにばかり多大な時間を割いており、アウトプットにあまり時間を割いていません。
大学受験で言うところのアウトプットというのは、大学で出題される問題の出題形式に合わせて知識を吐き出すことです。ですから、出題される問題の形式によって正しいアウトプットの仕方を身に着けて本番でしっかり正解を導けるように練習をすることが重要となります。
ざっくり分けるとマーク式の問題なのか、記述式(論述式も含む)の問題なのか、長い文章を読んで答える問題なのか、単発で出題される問題なのか、といった感じですね。
個別の知識で解ける問題なのか、それとも様々な知識を掛け合わせて複雑な解き方をする問題なのかによってもアウトプットの仕方は異なりますね。
そのトレーニングをするためのツールとしてはやはり過去問の研究が有効的でしょう。自分が一番行きたい大学で出題されるパターンがどのようなものなのかをしっかり研究し尽くして、速く正確にアウトプットできるような態勢を整えておきましょう。
さて、ここまでなかなか複雑な話もしてきたのですが、理解していただけたでしょうか?
人間はそこまで大きな生まれ持っての差はありません。磨き方によってどれくらい伸びるかが大きく変わる生き物です。今の段階でかなり力が厳しいものであっても、それを地道に磨き続けて、正しいトレーニングをしていくことによって、今は大きな差かもしれない志望校への合格を勝ち取ることができると信じて今日からスタートしましょう!