受験勉強は非常につらいものですよね。でも絶対合格しなければならないものでもありますから、たとえイヤなことであっても我慢し、根性で乗り切ろう!といったように、受験勉強を根性論の観点から考えてはいませんか?
一見正しいように見えるのですが、これは実は脳に大きな負担となっているあまり喜ばしくない状態なのです。
今回は、脳の仕組みから「なぜ勉強が嫌になるのか」を考え、これからあと半年、勉強にしっかり身が入るようになる方法をお伝えしていきます。
人間の脳の構造から考えると、勉強が嫌になることはいたって普通のことなのです。その嫌なことを我慢して無理を続けると、脳がいっぱいいっぱいの状態になってしまい、最終的には学習意欲の低下や過度な落ち込みといった、受験鬱状態に陥ってしまいます。
脳は人体の中で単位重量あたりもっともエネルギーを使う臓器なのです。ですから無駄にエネルギーを使用してしまうのを避けるためにも、生き残るためには優先順位の低いことに関しては、脳はなるべくエネルギーを使わないモードに入ってしまうのです。
一方で、生き残るために必要なスキル、例えば古代であれば狩猟能力や調理能力などを得るための学習は、脳は好んで取り組みます。子供が虫を取ったり、ままごとを好んでやるのは、その表れなのです。「遊びや体験を通して、楽しみながら学ぶ」というのが、人の遺伝子に組み込まれた本来の学習スタイルなのです。
では、受験勉強を楽しく学ぶスタイルに変えるためには、どうすればいいのでしょうか?
ここでは3つの助言をお伝えしましょう。
1.ただ黙って机に向かうなんてダメ
もちろん受験勉強においてはそうすることが重要になるときが多いので、全体的な話ではありません。
例えば、単語や歴史・公式などを覚えなければならないときに、淡々と机に向かって覚えるのではなく、歩きながら覚えてみるのもいいでしょう。また、集中力が切れてしまった時に、根性で机に向かい続けるよりは、立ってみるといいでしょう。
このようにとにかく体を動かして五感を使うことが「勉強は嫌なもの」となることを軽減してくれるのです。
2.目標達成率は7割を目安に立てよう
脳は「努力してみたら、成功した」という経験を「心地よいもの」と判断し、この心地よさを再び得るために、「もっとがんばろう」と次への意欲が生まれます。子供が虫取りにハマるのは、「がんばったら虫が捕れた→うれしい気持ちになる→もっとたくさん捕りたい」と脳が反応するからです。
しかし、受験勉強の場合は、結果が出るのはかなり先のことなので、期間が長くなります。そこで、長期目標ではなく短期目標を何度も何度も立てていけば、すぐに成果を感じられるようになり、「成功体験」の数も増えてきます。
そうすることで、次の短期目標へのモチベーションも高まります。
では、どのような短期目標を立てていけばいいのでしょうか?
それは「自分にとってちょっと厳しい目標が3割、自分の力で十分達成できそうな目標が7割」というバランスが最適といえるでしょう。
例えば、知らない単語が3割くらい含まれている英語の長文問題や、制限時間内に7割くらいは解き切れる数学の問題などが一番モチベーションが高まりやすくなります。
3.自分を褒めるときは、努力に対して褒める
自分を褒めることで学習に対するモチベーションの向上につながるかどうかは、どのように自分を褒めるかにかかっています。「自分は出来る人間だ。才能があるんじゃないか」といった能力そのものを褒めるのはあまり良くありません。
脳は「才能がある」つまり「努力しなくてもできる」と認知してしまい、今後の努力量にかかわってきます。むしろ、「つらい中だったけど、よく頑張った。あきらめないで努力を続けられた」というように努力した自分を褒める習慣をつけるようにしましょう。
勉強が楽しくなれば、勉強は楽になりますね。さて、次は具体的な方法をアドバイスしていきますので、日々の受験勉強に取り入れてみてください。
受験勉強はどの科目をとってみても、「暗記・記憶」にかかっているといっても過言ではありません。英語の長文は単語・熟語・文法を覚えていればいるほど、スラスラと読めますし、数学の難しい問題でも類似した問題の解法を暗記していれば、それを手掛かりに解答を導くこともできます。
ここでは、脳科学的な観点から効果の高い記憶術を提示していきます。
人は、視覚が優位な視覚系(見て覚えることが得意)と、聴覚が優位な聴覚系(聞いて覚えることが得意)に分類することができます。教科書の図や写真などのイメージを覚えやすいという人は視覚系ですし、人から聞いたことはよく覚えているという人は聴覚系になります。
視覚系か聴覚系かは幼少の頃に大きく表れるため、自分がどちらか分からない人は、幼い頃の様子を親に尋ねてみるといいでしょう。ここでは、視覚系、聴覚系それぞれに効果の高い記憶術に加えて、両者に通じる脳科学的記憶術も併せて紹介していきます。
「見る」ことが得意な視覚系の人に特におすすめなのが、記憶したいことを具体的な映像や図に置き換える方法です。脳の大脳新皮質の約7割は映像の情報処理のために使われており、文字だけの情報よりもインパクトがあって覚えやすいのです。
例えば、歴史上の人物は写真とセットで覚えたり、理科や社会は図説を使って勉強し、英語の前置詞のニュアンスは図で理解する、といった形です。
「聞く」ことが得意な聴覚系の人におすすめなのが、人から教えてもらったり、人に教えてあげることです。特に、人に教えるというのは、音読と同じで口から発した音が耳から入るため、脳にインプットされやすくなります。
また、授業で先生に質問した事柄や友人と出し合った問題というのは、印象的で記憶に残りやすいというメリットもあります。
ちなみに、一番効果的なのが、好きな異性に教えることです。出来る所を見せようと、下準備、つまり自分自身の理解をばっちりにしておくうえ、プラスのドキドキという良い刺激が記憶の定着率を高めるのだ。
例えば、塾や予備校に通って先生の講義を耳から取り入れたり、先生に積極的に質問に行く、友人と問題を出し合ったり教え合ったりするといった方法はすぐに試せますね。
その1:興味のあること、好きなことから始める
自分が興味のあることや好きなことは覚えられるが、苦手なことや嫌いなことはなかなか覚えられないものですよね。
これは、好きなことをやる喜びにより、脳が活性化されて機能が高まり、記憶に残りやすくなるからです。何かを覚えようとする時には、「苦手だからやらなきゃ、明日までに覚えなきゃ」ではなく「やりたい、おもしろそう」というその時の気持ちを優先し、好きなことから始めよう。
苦手なものは、気持ちが乗ってきてからでもいいのです。「嫌なものは後回し」は一般的にはダメなこととされていますが、受験に関しては意外な近道なのです。
例えば、すでに覚えた英単語の復習をしてから、新しい単語の記憶に入れば、安心感から入ることができますし、日本史の得意な時代をさらっと確認してから、苦手な文化史をやるとモチベーションも高いまま維持できますよね。
その2:寝る30分前で1日の学習内容をさらう
脳は、睡眠中に記憶の整理整頓と定着を行います。寝る直前にインプットした内容は、その後、新たな情報が入ってこないため、記憶に残りやすくなります。覚えるべきことが山積みの受験生にとって寝る前の30分間は記憶に最適な時間なのだ。
おすすめなのが、その時間を使って1日の学習内容をさらうことです。新しく覚えた単語や問題の解法プロセス、出てきた公式などをざっと復習しよう。あとは、睡眠の作用に任せるだけです。
例えば、専用のノートを作って、寝る前30分間に、その日にやった内容をざっと書き出しながら復習することや、その日にスマホアプリで覚えた単語を、布団の中で復習してから寝るなどがおすすめです。
その3:覚えるべきことをキャラづけして感情を持つ
私たちはうれしかったことや、悲しかったこと、イライラしたことなどはとてもよく覚えているものです。これは、感情を伴う記憶を優先的に記憶するという脳の性質に由来するものです。
この性質を、受験勉強にも活用しましょう。勉強する内容をドラマ仕立てにしたり、自分なりのユニークなネーミングをしたりと、感情を動かすことがポイントです。機械的に淡々と勉強を進めるのではなく、感情をフル活用して覚えると効果的です。
例えば、歴史の流れや歴史上の出来事をドラマ仕立てにしたり、数学の解法にオリジナルの名前を付けてみたり、教科書に書かれているものに「そうなの?」「うわぁ、かわいそう」みたいに気持ちを移入させながら読むなどが効果的です。
勉強をする上で、必要なものはたったの2つ。「始める」そして「続ける」です。シンプルではありますが、難しいこの2つの行動をラクに行うための方法を8個紹介していきます。
1:すばやくエンジンをかけたい時
朝一番や昼食後など、休憩モードの脳を勉強モードにすばやく切り替えるためには、脳のウォーミングアップが必要になります。脳の活性化に最適なのが、5分間の音読作業です。目で見た文字を脳で処理して口に出し、その音声情報が耳から脳に入る、という一連の動きが脳を目覚めさせる。
ポイントは、5分間で切り上げること。音読を要所で取り入れるのは効果的ですが、黙読に比べて読むスピードが落ちるので、音読ばかりしていては効率が悪くなります。なお、音読を行う時には、大きく、低めの音程で発音すると、自信が高まることが研究によって分かっています。
2:勉強モードになかなか入れない時
勉強モードに切り替わらないときは、「5分だけやる」と決めて、とりあえず勉強をしてみましょう。脳には作業興奮という仕組みがあり、作業をしているうちにスイッチが入り、やる気が出てくるようになっています。
勉強や家の手伝いなど、「やるのが面倒だったけど、やってみたら意外とはかどった」というのは、よくあることですよね。5分間やってみて、それでもまったくやる気が出ないときは、脳が疲れている証拠です。
そのまま無理に続けても効率が悪いので、思い切って勉強は切り上げた方がいいでしょう。少し休んでから再トライしましょう。
3:やる気が持続しない時
淡々と問題を解いたり何かを覚えたりしていると、脳はすぐに飽きてしまいます。そんな時に効果的なのが、問題が解けた時にガッツポーズをすることです。「よし!」「やった!」などと声を出すとより良いでしょう。
体の動きや音声を伴うことで、問題が解けた、という喜びが脳に強くインプットされるのです。ガッツポーズでなくても、自分の好きなポーズで大丈夫です。ただし、一度決めたら同じポーズをとる習慣をつけると良いでしょう。そのうちに脳が覚え、そのポーズをとっただけで前向きな気分になる、というループができるのです。
4:自信を失いかけている時
何かに挑戦してそれをクリアする、という成功体験は、やる気や自信と密接な関係があります。人は成功を経験すると、その瞬間だけでなく、後々になってもその成功を思い出すだけで気持ちがよくなるものです。
成功体験に浸っている時は、脳が活性化し、「またやりたい、できるはず」とやる気と自信が湧いてくるのです。
そこで、受験生におすすめなのが、いい点数の答案用紙や判定の良かった模試の成績表を机の前に貼っておくことです。自分を戒めるためにと、悪い結果を貼るのは逆効果です。勉強中は、見たときに気分がよくなるものに囲まれるように心がけましょう。
5:ネガティブな気分を切り替えたい時
落ち込んだ時、「気分を切り替えよう」と頭では思っていても、実際はなかなか切り替えられないものですね。そんな時には、にこっと笑ってみるといいでしょう。顔の表情と脳内の感情は表裏一体で、「楽しいから笑う」だけではなく、「笑うと楽しくなる」という仕組みになっています。
たとえ作り笑いでも、脳は「楽しい」と認識し、気持ちもポジティブな方向へと動くのです。笑顔の中でも特に、口角を上げる笑顔に効果があります。学校や試験会場で落ち込んだ時には、トイレに入って、鏡に向かってにこっと笑いかけてみると良いでしょう。
6:気分を盛り上げたい時
やる気アップに関係するホルモンの一つに癒されたような快感をもたらすセロトニンがあります。セロトニンは人から褒められた時などに分泌されるのですが、自分で自分を褒めても、同様の効果が得られます。褒め方のポイントは3つあります。
ここで大事なのが「才能や成果」を褒めるのであなく、「努力」に対して褒めることです。そしてこまめに何度も褒めること、声に出して褒めることです。「小さな目標を設定→努力して目標を達成→自分の努力を褒める」のサイクルを繰り返して、自分自身を伸ばすセルフコーチングをすることが重要ですね。
7:休憩後にダラけてしまう時
勉強する科目を変える時には、休憩をはさむ人が多いでしょう。実は、これが休憩後の「勉強イヤモード」を増幅させているのです。休憩後、問題集や参考書を出して、ページを開いて、という作業は、勉強開始へのハードルとなっているのです。
このハードルを下げるために効果的なのが、休憩に入る前に5分間だけ、次の科目の勉強をしておくことです。休憩後にゼロからではなく一から始められるように準備しておくだけで、スムーズに始動することができます。夜寝る前も同じです。机の上はきれいに片づけておくのではなく、翌日にやるべきことを準備しておくといいでしょう。
8:集中力がすぐに切れてしまう時
集中力が切れた状態でダラダラ勉強していては、効率が悪く時間ももったいないですよね。しかも、脳が疲れてくると、ダラダラしているという自覚さえ感じにくくなってしまいます。
そこでおすすめなのが、15分ごとにアラームを鳴らして、「ちゃんとやってる?」と自分自身に注意喚起することです。15分ごとに気持ちがプチリセットできることに加えて、次の15分でここまでやる、と小目標が立てやすく、メリハリのある勉強ができます。
またこれを続けていると、時間の感覚がつかめるようになるため、試験などでペース配分を考える時にも有効です
どうしても根性論で「がむしゃらに」「死ぬ気で」などと片付けられてしまう受験勉強ですが、理路整然とした脳科学的アプローチから見ると納得できる部分も多いのではないでしょうか?これらのことを意識して勉強を継続して、合格を勝ち取りましょう!