[高校生]2020年の大学入試制度改革について

2020年の大学入試制度改革について

2015/11/09

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2020年度に大学入試制度が大きく改革されることになっていますね。これは明治時代以来の大改革ともいわれ、今後の日本の教育体制を大きく揺るがすものと言えます。

とはいえ、具体的にそのコンセプトや目的、内容というのはあまり知られていません。そこで今回は大学入試制度の改革についてお話しをしていきましょう。

1.大学入試改革とは・・・

長年にわたり課題とされながら手つかずの大問題にいよいよ切り込む意気込みで、2014年中央教育審議会の答申を受けて始まったものであります。

その最大の動機は「公平性」という考え方を見直すことにあります。

現在実施されているセンター試験のように、皆同じように施された条件のもと、たった1回のテストで、そして1点刻みで、その先の人生そのものが大きく左右されかねない大学入試の在り方を、「公平」だとする考え方自体を根本から見直すべきではなか、というのがそもそものはじまりなのです。

生徒一人ひとりの能力や特性に応じて、じっくり適性を見極め、よりよい進路が選べるシステムを構築するのが目的なのです。

この制度改革は、目先の制度の変更ではなくその背景の思想そのものの変更を意図したものとして注目されています。また、そうでもしないと、この変化の時代を乗り切れる力を若い世代につけられない、という切羽詰まった状況も根底にはあるのではないでしょうか。

また今回の改革は高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を一体とした、教育の中身、入試制度すべてに関わる大改革だという意味で「高大接続改革」という言葉が使用されています。

いずれ、その流れが高校入試や小・中学の指導要領にも色濃く出てくる可能性があるものと思われます。

そしてこの改革によって目指すべき所は「真の学力を身に付ける」ということです。

それは、学力の三要素のバランスを重んじるということでもあります。つまり、

①知識・技能
②思考力・判断力・表現力
③主体性・多様性・協働性

という3つの要素をバランスよく身に付けることです。 そして、今回の改革の目標は「生徒一人ひとりの夢の実現、すなわち社会の豊かさを達成すること」なのです。

大目的として掲げられているのは下記の2点です。

〇将来に向かって夢を描きその実現に向けて努力している少年少女一人ひとりが自信にあふれた実り多い幸福な人生を送れるようにすること。

〇人口減少、労働力不足、グローバル化、多極化の荒波の中にある我が国において、その変化に対応できる人材育成を目指すこと。

子どもたちが夢をかなえることが、日本の社会全体をよくすることに直接つながるのだということがわかります。そしてそのためには、一人ひとりが思考力・判断力・表現力を持ち、主体性・協働性を発揮して社会の中で全力で生きることが必要なのです。

「一人ひとりが生き生きと活躍できる社会」というのは最近政治家の言葉の端々にもでてきていますね。 高齢化、人口減社会というのは、裏をかえせば若者一人一人に大きなチャンスと活躍の場があるということに他なりません。

にもかかわらず、さまざまなバリアで引きこもったり、思うような仕事につけなかったりする若者も多いのが実情です。教育が担う役割の大きさを再認識した形の改革だということでしょう。

2.大学入試制度(2015年10月現在)の改革から始まった

基本としては、現行の大学入試制度(センター試験・AO入試など)を廃止する方向が決定しています。 その代替案として提示されているのが下記の内容です。

〇大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
(高3以上の大学入学希望者は1年間に複数受験可。従来の学科試験に加え、教科・科目の枠を超えて思考力・判断力・表現力を見る「合教科・科目型」「総合型」の問題や、記述式の解答、英語では読み・書き・話す・聞くの4技能を見る問題などの出題が検討されている)

〇(大学ごとの)個別選抜入試
(単なる学科試験ではなく、小論文・プレゼンテーション・討論・面接・推薦書・調査書・資格試験等で主体性・協働性などを見極めることが検討されている)

上記のシステムに加え、中・下位大学は、
〇高等学校基礎学力テスト(仮称)
(高2~3年の希望者は最大4回受験可。CBT(後述)の導入による成果が多いに期待されるテスト。本来は達成度の把握や意欲の喚起、指導改善に活かす目的が主だったが、入試への導入がクローズアップされている) を使用することが検討され始めている。

3 注目されている点

(1)CBT(Computer Based Testing=コンピュータによるテスト)の導入

一人ひとりの能力をきめこまかく判断するために、問題の解答状況からその生徒にあった問題をコンピューターが自動的に選択していくというシステムのことです。

一人ひとりにあった活躍の場を、という思想が反映されている。 高等学校基礎学力テスト、大学入学希望者学力評価テストの両方で導入が検討されている。このシステムが稼働してはじめて各高校を会場として独自の日程で行う基礎学力テストが可能になる、という側面もあります。

しかし・・・50万人の受験者に対応する端末の準備、システムの開発、経費など、まだまだ検討段階です。

(2)英語の民間の資格・検定試験の活用

一部の高校・大学では入試の資料としてすでに取り入れられています。英語の聞く、話す、読む、書くの4技能の評価において民間のテストの経験と実績、信頼は大きなものがあるということでしょう。

しかし・・・経費が別途受験者負担になることや、テストによっては地方で受験機会が限られているなどの理由で全面的な採用はやはり検討段階であります。しかし、民間のテストで好成績をとっていれば使い道は大きいということは言えます。

いずれにしてもすべてはまだ検討段階ですので、変更があると随時発表になるので、報道にはよく気を配る必要が あります。

4.平成28年(2016年)度に新中1となる生徒・保護者の方へ

1)知っておいてほしいこと
①一人ひとりの夢をかなえるために新制度はある、ということです。
チャンスは大きい、ただし努力も必要。 一人ひとりが夢をかなえて生き生きと働くことが日本を元気にして社会全体をよくするのです。そのために教育があるのです。ただし、夢をかなえるのは楽ではありません。日ごろからよく考え、努力する人になってほしいという願いもそこにはあるのではないでしょうか。

②2016年度の中学1年生の教科書はすでに新しい教育方針を反映させて改訂されています。
一例として英語では、英語を使って何ができるようになるのか、という目標が教科書に明示されています。また、プロジェクトというコーナーでは、具体的に英語で自己紹介をしたり、友達を紹介したり、という課題が与えられているようです。

③2016年度の大学入試からさっそく始まる「個別選抜」。
来春から、東大で後期選抜が廃止され、推薦入試が導入される。京大でも特色入試が導入される。

科学オリンピックなどの実績評価や研究テーマの英語でのプレゼン(?)など、実験的な試みがされる可能性があります。

④(現時点での)入試改革スケジュールによると新中1は、
・高等学校基礎学力テストの試行期間に当たる(高2・3)
高校2年次が試行期間の2年目にあたる。希望者は受験できるが、成績は就職・入試には使えません。CBTの本格導入に至らない可能性があり、実験的に、学力を見る、参考までに調査書には記載される、程度の扱いになるかもしれません。

・大学入学希望者学力評価テストの試行期間に当たる(高3)
高校3年次が試行期間の2年目にあたる。センター試験は廃止されているので、まだ、詳細は発表されていないが、 国公立大学希望者は高校3年次にこのテストを複数回受験することになる。これは大きな変化となる。

(2)心がけたいこと
①大学進学希望者は高3の初めに大学入試が始まる、と考える。
高2までの範囲の学力(思考力・判断力・表現力)が、評価テストに(1回分くらいは)反映される可能性があります。大学入試は高校3年の3学期ではなく、評価テストの実施時期によっては1学期から始まる可能性があります。

国公立が早まれば当然、私立も連動するので、高2までのうちに、志望大学に必要とされる学力を身につけるという準備が必要になってきます。(ただし、まだ実施時期は明らかでないですが。)高校3年の内容を先取りして学ぶ、ということではなく、その時点まで履修した教科の知識を使って、考え、判断し、表現する応用力を常に身に着けておく、学習習慣(トレーニング)が必要ということですね。

②中高大を通して、授業も、学び方も、勉強の仕方も少しずつ変わる、と考える。
学習内容がハードになるので、日々の学習が大事。アクティヴラーニング(能動的な学習方法)を取り入れることが検討されているようです。

指導要領や教科書改訂のタイミングで、思考力・判断力・表現力を養う、応用系の問題が取り入れられたり、記述式解答やプレゼンテーションによる研究発表などが要求される可能性も十分にあります。

一方的に知識を与えるだけの授業から変わろうとしているのは事実です。知識を得るだけにとどまらず、それを使って何ができるかまでが目標とされるので、今までの学習よりハードルは高くなります。日本の子供たちの勉強時間が少し伸びる方向になる可能性があるのではないでしょうか。

だらだらテレビや携帯に費やす時間は減らさないと対応できないかもしれませんね。

③評価テストは(他のテストも)問題が変わる、と考える。
思考力・判断力・表現力を見る「合教科・科目型」「総合型」の問題が出たり、記述が出たり、複数の解答がある問 題が出たりするのではないでしょうか。

OECDが実施している「生徒の学習到達度調査」のような問題、と表現さ れていますが、公立の中高一貫校の入試問題や、高校入試の総合問題のようなものに近いものと考えられます。(中 高一貫校の生徒は有利、と言われるのもその種の問題の学習経験があるからということらしいです。)

しかし、あく まで、与えられた課題をよく読んで、よく考えて、自分がいいと思う答えを、わかりやすく表現する、という日頃 の訓練がものを言います。

④グローバル化はさけてとおれない。英検などは利用価値が高い、と考える。
英語は4技能、読み・書き・聞き・話す力を鍛える。入試だけでなく職場やインターネット上で必要になることもある。単語力をつけるだけでなく、音読して教科書の本文そのものを暗記する学習が有効です。毎日声に出して読むことを心掛けてください。

また、英検などには積極的にチャレンジしていきましょう。

⑤全員にチャンスあり。ただし夢をかなえるには努力も必要。
すべての生徒に、各自にふさわしいさまざまな進路が開かれています。その分はチャンス拡大していくでしょう。ただし、自分が何をしたいのか、何に興味があるのか、中学生から意識を持って学校生活に臨むことが大事になってきます。

目的に合わせた学習があっていい、ということですが、悪くすると学力の二極化を招きかねないのでしっかりと目的意識を持って生活していくことが大事ですね。

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2024/04/19 更新