机上で長方形の面積を求めることはできても、「はがきの面積はどれくらい?」と聞かれると答えられない子は少なくないはずです。
現代社会ではこれまでのように、言われたことをやるだけの「マニュアル人間」よりも、問題解決能力を備えた人材が必要とされています。つまり求められているのは、「暗記力」より「思考力」なのです。
そこで、公立中高一貫校では、私立中学の入試とは異なる、いわゆる「PISA型」学力を試す「適性検査」を実施しています。
「PISA型」学力とは、簡単に言うと、学校や塾で学習したことを実生活で応用できる力です。
PISAとは、Programme for International Student Assessment の省略で、OECD(経済協力開発機構)が幼児教育から成人教育までの幅広い教育のあり方を提言し、各国の人々(日本では高校1年生が調査対象)が実生活で直面するさまざまな問題を、学習した知識や、獲得した技能をどれだけ応用して解決できているかを調べるために始めた調査です。
公立中高一貫校でも、「マニュアル人間」「丸暗記児童」ではなく、「思考力」「コミュニケーション力」を備えた生徒を選抜するため、「適性検査」でこの「PISA型」を採用しているのです。
しかし近年、私立中学でも、「適性検査型」入試(PISA型・公立中高一貫校対応型など名称はさまざま)を採用する学校が増えてきました。
その理由の一つとして考えられるのは「PISA調査」の影響力です。
PISA調査の結果は、各国の教育政策の改善や見直しに大きな影響を与えます。日本でも「ゆとり教育」によってPISA調査の順位を落とした、いわゆる「PISAショック」をきっかけに、学習指導要領が改訂されました。
しかし、それよりももっと大きな理由は「受験生の獲得」でしょう。
従来の私立中学入試の勉強をした児童だけでなく、公立中高一貫校の準備しかしていない子へも門を開くことで、受験生を増やすことができるからです。
では、「公立中高一貫校」しか考えていない子が、私立中学の「適性検査型」入試を受験するメリットはあるのでしょうか?
たとえば東京都の場合、都立の中高一貫校入試は例年2月3日に行われていますが、私立中学の入試は2月1日から始まります。
「公立中高一貫校しか考えていない」という受験生にとっても、2月1~2日に「適性検査型」の私立中学を受験することで受験の経験を積む「場慣れ」のチャンスが増えます。
また、公立中高一貫校入試は倍率が高く、10倍以上になることも珍しくありません。ということはかなりの「狭き門」で、お子さんは非常に高い確率で「人生はじめての挫折」を味わうこととなります。
それは12歳の子どもにとって、大人が考えている以上に大きなショックとなり、子どもによってはその後の生活に支障を及ぼすこともあります。
受験で「不合格だった」という結果だけで終わるより、「私立中学には合格した」という結果があるだけで、次のステップへ進む気持ちが芽生えるようです。
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