会社を退職して、退職した年と同一年内に再就職しなかった場合には、その翌年に確定申告を行う必要があります。会社に勤務しているうちは、納税に関する手続きは基本的には会社が行ってくれるので、本人は納税に関して行うことはほとんどありません。
しかし、会社を退職した場合には、今度は、納税に関する手続きを全部自分で行わなくてはなりません。納税に関する手続きの代表的なものが、確定申告になります。
なお、会社を退職しても、退職した年と同一年内に再就職が決まる場合があります。このような場合には、退職時に会社から交付された源泉徴収票を再就職先の会社に提出すれば、再就職先の会社がその年の納税に関する手続きを行ってくれます。この場合には、本人は一部の例外を除いて、翌年に確定申告をする必要はありません。
さて、確定申告を行うことは法律上の義務ですから、確定申告のメリットの有無に関わらず、行う必要があります。しかし、会社を退職した年に再就職をしなかった場合の確定申告については、還付金を受けることができるというメリットがあります。
特に春先などに退職をして、その年は雇用保険からの給付金で生活した場合などには、その年に受けた収入が退職した会社からの給与収入のみで、しかも、その収入の総額が103万円を下回る場合があります。その場合、退職時に会社から交付された源泉徴収票に記載されている源泉徴収税額の全額の払戻しを受けることができます。
例えば、1月~3月まで勤務して3月末に退職し、その年は12月まで再就職せず雇用保険からの給付金で暮らした方を想定します。この方の1月~3月までの給与総額を340,000円/月、社会保険料控除後の給与額を300,000円/月とします。この方が独身であれば、毎月の源泉徴収税額は8,670円です。
ですから、退職時に会社から交付される源泉徴収票には、給与の支払総額として1,020,000円(3か月分)、源泉徴収税額として26,010円(3か月分)と記載されているはずです。この方が、退職の翌年の確定申告を行えば、源泉徴収税額の26,010円全額の払戻しを受けることができます。
その理由は、給与収入の非課税限度額は103万円です。また、雇用保険からの給付金は課税対象とはなりません。この方の、この年の給与収入総額は102万円で、それ以外に課税対象となる収入がないですから、本来であれば、所得税を払う必要はありません。
それにもかかわらず、所得税を支払っていますから、確定申告を行うことで、払戻しを受けることができるというわけです。再就職ができないと経済的には大変ですが、申告で少額とはいえ払戻金を受けることができるというのは、うれしいものです。
なお、会社を退職した年に再就職をしなかった方が確定申告をする場合には、退職の翌年の2月中旬から始まる確定申告の期間に、退職時に会社から交付された源泉徴収票、その年に支払った医療保険や国民年金保険料の控除証明書や領収証、生命保険料などの控除証明書、印鑑などを持参して、住所を管轄する税務署へ行きます。
確定申告の時期になりますと、税務署では申告相談コーナーが設けられています。確定申告に関する知識がなくとも、相談コーナーの相談員が丁寧に指導してくれますので、申告手続きを完了することができます。なお、還付金が発生する場合には、還付金の振込先の銀行等の預金通帳も忘れずに持参します。
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