貯蓄・投資[67]

マイナス金利下での投資対象の本命はJ-REIT

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執筆者:青沼 英明

年初から日本株の回復が遅れるなか、J-REIT(不動産投資信託)は活況が続いています。

この背景には、日銀のマイナス金利政策の導入で、相対的に利回りの高いJ-REITに投資マネーの流入が続いていることにあります。

J-REITの全体的な値動きを示す東証REIT指数が、1年4カ月ぶりの高値水準にあることで、市場には割高感を指摘する向きもありますが、超低金利と好需給に支えられて、当面は上昇基調にあると思われます。

現在は、REITにとって最適な投資環境

5月10日の東証REIT指数は、1947.16で年初から11%上昇、昨年9月安値からは30%上昇し、昨年1月の2005.07以来14カ月ぶりの高値水準にあります。

この背景としては、下記の4点が挙げられます。

①昨年来のインバウンド(訪日外国人)関連需要の急増に伴う不動産価格や賃料の上昇

②3%強の予想分配金利回りに加え、為替変動リスクもない

③マイナス金利は、物件取得の金利負担減となり、分配金が増えるとの思惑を生みやすい

④日銀による買い入れ枠(2016年900億円)の拡大期待のほか、運用難から海外投資家に加え、銀行や生損保、投資信託などの国内勢もREITへの投資を拡大方向にある

「世界的に緩やかな景気回復と金融緩和による低金利の同時並行が、REITにとって最適な投資環境」であることを考慮すると、引き続きJ-REITは投資対象として魅力があります。

ただ、オフィスや商業施設、住宅、物流施設、ホテルなどREITが保有する物件のタイプで価格動向は異なるため、個別銘柄に投資する際は、トレードオフの関係にある価格と利回り、物件の含み益や借入金の期間などに基づいた見極めが重要となります。

このため、そうしたリスクを避ける意味では、分散投資された投資信託やETFでの購入が無難だと思われます。

東証REIT指数は、2100ポイント程度まで8%程度の上昇を予想

市場では、最近の急速なJ-REIT価格の上昇による割高感や、東京都心の物件取得が難しくなって利回りが低下する一方、郊外物件の購入増は需要変動リスクが高いことなどを懸念する見方が出てきています。

しかし、私は下記の理由から、そうした懸念は当面顕在化しないのではないかとみています。

(1)株のPBR(株価純資産倍率)にあたるNAV(純資産価値)倍率は1.3倍台、予想分配金利回りも3.3%程度と過去の平均水準であり、現時点での割高感はない。

(2) 東京都心の新規取得物件の利回り低下の一方で、保有物件の含み益は過去最高の約1.5兆円程度に拡大しており、日銀の追加緩和や鑑定評価の遅効性などを考慮すると、さらなる含み益の増加で、NAV(純資産価値)が膨らむ可能性が高い。

(3) 商業施設やホテルなどの郊外物件は相対的に景気の影響が大きいものの、訪日外国人客の着実な増加(2015年1974万人2020年政府目標4000万人)が寄与するほか、電子商取引の増加による物流施設の需要増などで、需要変動リスクを抑制する効果が期待される。

今後のREIT価格の動向を占う上では、マイナス金利によるインプライドキャップレート(投資家の期待利回り)の低下で資金調達が改善し、より積極的な物件取得行動から不動産価格の更なる上昇に繋がっていることが確認できれば、東証REIT指数はNAV倍率1.5倍の2100ポイント程度まで8%程度の上昇が予想されます。

 

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貯蓄・投資総合ランキング2024/12/03 更新

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