昨年は世界的に株式相場を大幅に上回る上昇を示した日米のREIT相場も、今年は一転して下落基調となり、世界同時株安となった8月後半以降は下落に拍車がかかった状況です。
市場では、「購入予定の不動産価格の高騰や賃料上昇の遅れ、米国の利上げに伴う資金調達負担増への懸念」などが下落理由とされていますが、それはマイナス面だけをクローズアップした近視眼的な見方だと思われます。
米国が利上げしたり、REITが増資を活用して物件購入を急ぐ理由のほか、足元の需給要因などを理解すれば、日米のREIT相場の反転上昇の時期は近いと考えられます。
今年のREITの低迷は、昨年の大幅上昇に伴う反動安
昨年の日米のREIT指数は共に30%近く上昇し、日経平均やNYダウの7%程度の上昇率を遥かに上回りました。
しかし、今年1月の高値から一転して下落基調となり、9月に付けた安値までの下落率は日本が25%、米国は15%に達し、日経平均の3%高やNYダウの8%安を大幅に下回っています。
これらを現象面から捉えると、米国の利上げを巡る様々な憶測のほか、ウクライナや中東での軍事リスク、ギリシャの政治リスク、中国の経済リスクなど不透明要因の増大で昨年より投資環境が悪化した結果、より含み益の大きい日米のREITの利益確定売りが膨らんだ要因が大きいと考えられます。
ただ、日米のREIT市場が「米国の利上げや高騰する物件購入によるコスト負担増加の一方で、REITの保有不動産の賃料上昇スピードが遅い」というのは、時間的経過を考慮していない近視眼的な見方と言わざるを得ません。
中長期的視点では、利上げは米国経済が良好であること、REITが増資を活用した物件購入を拡大させるのは不動産の先高期待があることが前提になっていると考えられます。
そうした前提の下では、賃料上昇より先に資金調達コストが上昇したり、物件購入を急ぐのは当然のことであり、その後の不動産価格や賃料上昇を通じて、収益の増加が負債コストの増加を上回る限り、REIT価格は上昇する傾向にあると言えます。
日米比較では、日本のREITに魅力があり、ここから年内13%程度上昇予想
こうしたなか、今後の日米のREITを比較すると、
「世界的に緩やかな景気回復と金融緩和による低金利の同時並行が、REITにとって最適な投資環境」であることを考慮すれば、日本のREITの方に魅力があると考えます。
現在の日本のREIT価格は、需給悪化に伴う反動安により、株のPBR(株価純資産倍率)にあたるNAV倍率が1.1倍台と今年1月の1.5倍から低下し、年初から3%を下回っていた予想分配金利回りも4%近くまで上昇しており、割高感は解消された水準と言えます。
ここにきて、広がり始めている追加緩和期待も支援材料となり、REIT価格の反転上昇の時期は近いと考えられ、9月15日の1587.79から年内には8月の世界同時株安直前の1800.程度まで回復(約13%上昇)すると予想しています。