2012年のアベノミクス相場の始まりとほぼ同時に円安に転じたドル円相場は、約3年が経過した今年に入り、世界経済の不透明感や日米中央銀行の金融政策に振り回され、円高傾向を強めながらも、ボラタイル(価格の変動率が高い)な相場展開が続いています。
この間、原油価格や政治的要因を含む為替の決定要因が複雑に絡み合い、それに伴うヘッジファンドなどの投機マネーの流れが変動を大きくしていると考えられますが、今後のドル円相場を予想するには、何らかの指針が必要と思われます。
円高の流れに歯止めも
今後においては、ドル円に対する日米の政治的駆け引きや米国の利上げペース、日銀の追加緩和の有無などを巡る為替変動リスクは残るものの、原油価格の上昇に伴って世界経済の減速懸念は後退し、日米の金融政策も「米国の利上げと日本の金融緩和」という方向性は変わらないため、積み上がった投機筋の円買いポジションも相当程度解消に向かい、円高の流れに歯止めがかかる可能性があります。
ただ、為替相場では、株や債券と異なって長期で価値が増えていく性質はなく、値動きに賭ける投機色が強いため、割高割安を計る指標がないことが今後の予想を難しくしています。
長期で見れば、為替は経済や軍事などの国力を反映していますが、購買力平価や金利平価などのこうあるべきという説を持ち出しても、短期的な為替予想には役に立ちません。
日米金利差が再び拡大し、1ドル115円前後の円安へ
こうしたなか、今後の為替相場を予想するに当たっての指針としては、「市場がその時に何に注目し、どのように予想しているか」という連想の行きつく先を考えることであり、日々の為替レートの動きに関心を持ちつつも、ある程度のトレンドを読む視点を持つことだと考えます。
その意味では、年初からのドル円を動かしてきたのは日米の金利差であり、その背景には米国の足元の心もとない景気動向が利上げペースに影響し、ドル円に作用したと判断されます。
この間、市場は日米中央銀行が金融政策を決めるイベントがあるたびに一喜一憂し、政治家や米連銀総裁などの要人の発言があるたびに裏読みして根拠のない推論を導き出し、トレンドを考慮しないその場限りの投機的売買が為替相場の乱高下に拍車をかけたと推測されます。
仮に、今後も市場が日米の金利差に注目しているとすれば、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを続ける一方で、日銀は金融緩和を続けるという金融政策の違いから金利差は再び拡大し、円安ドル高のトレンドに戻ることが期待されます。
米国の利上げペースについては、ここにきて米国経済に対する市場の過度な悲観をけん制し、年2回の利上げを示唆する米連銀総裁の発言が相次いでいることは円安ドル高要因です。
また、イメージ的には直近のドル・円相場の7~8割は米国発の要因と世界情勢で決まっており、日銀のマイナス金利が円高株安を招いているという根拠も乏しく、今後の追加緩和に支障をきたすものではないと思われます。
以上の結果、行き過ぎた円安と円高の修正値として、昨年の125円と今年の105円の中間である1ドル115円前後の水準が当面の目途になると予想しています。
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2024/11/20 更新