8月以降の世界同時株安の主因とされる中国経済への懸念が払拭されず、現在も株価が下がれば中国リスクと結び付ける短絡的なメディア報道で溢れているように思われます。
ただ、「中国の景気減速が世界景気を失速させる」といったメディアの論調は、データ的裏付けに乏しい憶測に過ぎないものが多く、中国経済への過度な悲観は、投資の好機を逃しかねないのではないかと思います。
中国経済の「ニューノーマル(新常態)」や株式市場の特性である「慣れ」を理解すれば、ここからの株式投資に躊躇する必要はないと考えます。
経済統計は捉え方次第でいかようにも解釈可能
中国国家統計局が10月19日に発表した7~9月期実質GDPは、前年同期比6.9%増と市場予想を0.1%上回ったものの、大半の一般紙の見出しが「成長率7%割れ、6年半ぶりの低水準、世界経済を揺らすリスク」と悲観一色であり、これは経済統計が捉え方次第でいかようにも解釈可能であることを示しています。
こうした見方の問題点としては、①中国経済が投資主導から消費主導への構造改革を図る「ニューノーマル(新常態)」への移行期であること、②中国のGDPが6年半で1.6倍となり、現在は日本の2.7倍もある世界第2位の規模に達していること、の2点が抜け落ちていることです。
①の習近平指導部が掲げる「ニューノーマル(新常態)」は、高齢化や環境・資源の制約などで2ケタ成長が望めなくなったことを認め、1ケタ台後半の成長持続を目指す政策です。
ここで重要なことは、構造改革の主眼がリーマンショック後の大規模経済対策(約57兆円)の副作用である安易な設備投資や不動産バブルを解消するという健全な政策であり、その後の13億人に及ぶ消費主導経済への転換も株式市場にとってポジティブなはずです。
足元においても、IMF(国際通貨基金)が10月に改定した中国の成長率見通しでは2015年6.8%、2016年6.3%と今後も減速は緩やかなほか、②のように急速に拡大した中国のGDP規模からすれば、中国政府が掲げる7%の成長率目標を下回ったとか、実態は公表数字より低いという市場の推測などが、世界経済を揺らすようなリスクの根拠になるとは思えません。
株式市場の特性である「慣れ」により、中国リスクへの懸念は薄れる
株式市場においては、何が起こっているか不透明なことがリスクであり、ネガティブな材料でも既知の事実として株式市場の特性である「慣れ」が生じてくれば、悪材料を織り込むという形で株価が上昇に転じるという傾向があります。
今後も中国の景気減速が続くことが想定されるなか、前述のニューノーマルを始めとする中国経済の状況が株式市場に浸透していくことに伴って中国リスクへの懸念は薄れてくるため、ここからの株式投資に躊躇する必要はないと考えます。
私は、中国の目先の悪影響を考慮に入れても、今期過去最高益が見込まれる日本企業の業績を背景に、日経平均は年末までに20000~20500円程度まで上昇すると予想しています。
今月下旬から決算発表シーズンに入り、個別企業の決算動向で株価が大きく振れることが予想されますが、8月以降の株価急落で業績悪化懸念を相当程度織り込んでいると思われるため、今後はネガティブ・サプライズが減って、ポジティブ・サプライズへの反応が大きく出てくると思われます。
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2024/12/03 更新