何故、おとといの夕飯をおぼえていないのでしょうか。
子どもと一緒に食事をするとき最優先することはなんですか?躾ですか?楽しく食べることですか?両方できるに越したことはありませんが、「躾なければ」と思うと、どうしても叱る回数が増えてしまいます。けれども、叱られて食べた経験は将来に渡ってよくない影響を与えてしまうかもしれません。
そこで今日は、『1人でできるになる テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話します。
一昨日の夕飯を覚えていますか?一週間前の月曜日のランチの内容を覚えていますか。即行答えられる人は少ないでしょう。何故でしょうか。それは特に大きな感動もなく食べていたからなんです。
夫でも元カレでも大好きな人と初めてデートしたとき行ったレストラン、食べたメニューを覚えていますか?結構、覚えている人も多いのではないでしょうか。
これで思い出せなくても昔、友達と大喧嘩した場所や自分をいじめた相手の顔や相手の服装など記憶に残っていませんか?
このようにハラハラドキドキした、ワクワクした、怖かった、凄く悲しかったなど強い情動を伴う記憶ものはいつまでも覚えているものです。
人間には短期記憶と長期記憶があります。短期記憶とはその時は覚えているけれど忘れ去られるもの、長期記憶とはいつまでもずっと覚えている記憶です。
長期記憶は脳の深部にある海馬に記憶されるそうですが、そのためにはそのわきにある情動を司る“扁桃体”という箇所から信号が行かないとダメだそうです。扁桃体がブルブル震えた記憶はいつまでも覚えています。
認知症の人が“ご飯を食べたこと”を忘れても、過去の楽しかった思い出や歌、辛かった記憶はずっと覚えているのと同じですね。
だから、無感動のまま機械的に食べたおとといの夕飯メニューは忘れても、10年以上前の初デートで食べたハンバーグやアイスクリームの記憶はまだあるのです。おそらく死ぬ間際まで覚えているでしょう。
食事中は「零さないの!手を使わないの!お箸を正しく持って!好き嫌いしないで全部食べなさい!」と小言が多くなりがちです。でも、叱られながら食べる食事は決していい影響を与えません。
(C)あべゆみこ
あれこれたくさん要求しないで一つくらいにしましょう。また、叱り方も「手を使わないの」ではなく「スプーンで食べようね」と肯定形で言うだけで不快にはならないものです。
幼児期はまず“食事は楽しい”という経験をさせることが優先ですよ。そうしないと「食事は嫌だった、辛かった、苦しかった」という感情を伴って扁桃体は信号を出し、一生覚えている長期記憶にインプットされてしまうかもしれません。
なかなか難しいかもしれませんが食事は楽しく食べましょうね。