遊んでいて遊具に頭があたったり、運動中に転んで頭を打ったり。頭部のケガは、すぐに病院に連れていったほうがよいのか、それともそのまま様子をみてよいのか、判断に迷って不安になりますよね。
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子どもの事故の中でも、多くみられるのが頭部の外傷です。こどもは、大人と比べて体の割に頭が大きく重いので、倒れると頭を打ちやすいという特徴があります。
頭を打つ事故は、乳幼児期は室内でよく起こりますが、もう少し年齢が上がって園児や学童になると、遊びや運動中の事故、登下校時の交通事故など屋外の事故が目立ってきます。
頭を強く打った、勢いよくぶつけた、高いところから落ちたなど、心配な事故が起こったときに、まず最初に実行してほしいのが「意識の確認」です。事故にあったとき、こどもがちゃんと息をするか、会話ができるか、目線が合うかまずみてください。このとき、子どもの体をあまり動かさないことです。
また、呼びかけにこたえないからといって、子どもの体を揺さぶってはいけません。
呼びかけても反応がないときや意識がもうろうとしている場合、嘔吐やけいれん、ケガをして出血量が多いような場合は、緊急性が高いと考えて、すぐに救急車を呼びましょう。
顔色が悪い、元気がないなど、こどもの様子がいつも違うときも、早急に病院を受診してください。
頭をぶつけたあともふつうに会話ができて、これといった異常がみられないときは、精神的なショックがおさまるまで様子をみます。手足の傷や頭の傷を調べて、痛がるときや傷がひどい場合は、医療機関で診察を受けます。
ところで、頭をぶつけたあとに、皮膚のすぐ下の毛細血管が切れたり、皮下組織にむくみが生じてこぶができることがあります。いわゆる「たんこぶ」です。昔は「頭を打ったときに、たんこぶができれば安心」といわれましたが、そんなことはありません。
外側にみえるこぶと頭の中で起こっている障害とは関係ありません。
頭蓋骨の骨折により陥没した部分をこぶがカバーしてしまって、骨折の有無がわからない場合もあります。たんこぶが大きく腫れ上がり頭痛を訴えているような場合は、頭蓋骨骨折などの可能性を考えて、すぐに受診し、検査を受けるほうがよいでしょう。
頭をぶつけた直後にはこれといった症状がなくても、24時間は安静にして、こどもから目を離さずに慎重に様子を見守ってください。
元気そうにしていても、頭の中でじわじわと出血が進んでいくケースがあるからです。また、こどもは大人に比べて、外傷後は脳が腫れやすいことで知られています。
顔色が悪いとか嘔吐やけいれんをする、頭痛が激しいなど、少しでもおかしいと思われるようなときは、夜間でも医療機関を受診してください。
こどもの事故対策としては、大人が環境を整備したり、過度な危険のある場所で遊ばせないなどの注意が必要です。けれども、子どもは遊びの中で危険を予測し、回避する能力を育てていきます。事故をおそれるあまり遊びの禁止事項を増やせば、危険を学ぶことができません。また、上手に転ぶためには、ある程度転ぶ体験が必要です。
「子どもは転ぶもの」と考えて、安全な場所でいろいろな遊びをさせてあげてください。
診察室は、「頭の中の出血、大丈夫でしょうか」と医師が保護者の方から聞かれることが多いそうです。脳内出血があるかどうかは、CTやMRI検査などの画像検査を行ってみないと確定できません。
でも、全例に検査をしたほうがいいかというと、そうではありません。CTやMRIなどの画像検査をしたほうがいい目安があります。
たとえば、頭部打撲の状況が激しい場合やこぶが腫れ上がり頭痛を訴えているとき、嘔吐している、顔色が悪い、意識状態がもうろうとしているときなどです。こうした兆候に加えて、医師の診察で、検査の必要性を決めていきます。検査をすべきかどうかは医師の判断に任せましょう。