学習をするうえでも、人間関係においてもすべての基礎はまず相手の話を聞くことから始まります。
子どもたちに聞く力がつくと、ママたちは「子育てがラクになった」と口をそろえていいます。叱る回数が減り、イライラさせることも少なくなるからでしょう。これは、聞く力をつけることで子どもが大きく変わるからです。
まず、ケンカをしなくなります。思いやりも出てきます。たとえば、赤鉛筆を忘れて困っている子に対して、気づかぬうちにそっと貸したりすることができるなんてこともあるでしょう。以前はそんな気遣いができなかった場合でもです。学力も目に見えて上がってきます。
これらは、聞く力と直接は結びつかないように思われるかもしれません。でも、「聞く」というのは、相手の言葉をまるごと受け入れて理解し、自分の判断で行動することです。これができれば対人関係はうまくいきます。学校の授業にしても、先生の話を聞くことができれば質問が出てきたりして、理解が深まります。
世のママたちの口ぐせのひとつは「うちの子、人の話を聞いていない」です。嘆く前に聞けない理由を明らかにしましょう。それが聞く力をつけるための第一歩です。
子どもだけの問題ではなく大人の側にも問題があります。先生が「教科書の36ページを開きなさい」と言って全員が一斉に36ページを開くことはまずないそうです。聞き逃した子のために先生がもう一度言うことを子どもたちは知っているのです。
「聞き逃しても大丈夫」な状況がつくられています。「何回、同じことを言わせるの!」とママたちは嘆きますが、子どもにしてみれば、どうせ何回も聞かされるのなら、一生懸命「聞いてもムダ」ととらえるようになっているのかもしれません。大人が聞く力を奪っている場合があるのです。
聞けない理由をタイプ別に分けてみます。もちろん、ひとりの子のなかにいくつものタイプが重なる場合もあります。
最も多いのは「聞いているつもり」です。よく子どもたちは「聞いているよ」と言います。でも数字や言葉を聞き取るテストをしてみると正確に書けていません。そこで、初めて子どもたちは聞いているつもりになっていたことに気づきます。気づくと正確に聞き取ろうと集中します。「気づいて修正」、このプロセスが大切です。
「場面が変わると聞けない」という子がいます。家ではできるのに学校では先生の話がわからないという子です。これは学校では「聞いて行動する」ことをしていないからです。
授業中に先生が教科書の○ページを開きなさいと言ってもそれをしません。聞いて行動しないから、どんどん授業についていけなくなってしまうのです。家庭や図書館、病院など環境を変えてママたちが同じような話をしてみてください。
「長いセンテンス」の話が聞けないという子もいます。家庭では、ぜひお手伝いをさせてみてください。「お皿3枚、スプーン3本、コップ3個出して」と複数の指示を同時に聞いて動けるようにしたり、「ママはこれから出かけるけど、○時になったらこれやっておいてね」と時間を意識して動けるようにしたり、家事は聞く力をつけるのにうってつけです。
「何回も同じことを聞く」子は、じつは聞いているように見えて頭に入っていないのです。「それが終わったら、○○してね」というように切り替えられるように話しましょう。
「しゃべってばかりで聞かない」子のなかには自分をコントロールできないケースもあります。その場合は子どもをきちんと落ち着かせてから聞くのが効果的です。