あなたのお子さんは、家族と楽しくおしゃべりをしながら食事をしていますか?
暗い表情で食べていたり、静かに黙々と食べていたりしませんか?
もし日常的にこのような食事になっていたら、危険信号です。一度あなたのおうちの食卓を見直す必要があるかもしれません。
食事の目的の1つは栄養補給ですが、子どもにとって食事は、他にも重要な意味があります。就学前の小さな子どもの生活は、大きく分けて「遊ぶ」「寝る」「食べる」の3つです。
その中で、ある程度まとまった時間を費やして家族と関わりをもてる唯一の時間が、食事の時間なのです。
ところが現在は、両親が共働きだったり、子ども自身のお稽古事通いなどで、家族の食事時間がバラバラになりやすく、1人で食事をせざるを得ない子どももいます。
そして、家族と楽しく食卓を囲むという機会を失った子どもたちの中には、不登校、いじめ、対人不安など、心の問題を抱えている子が少なくないのです。
子どもは食べ物と同時に、食卓の雰囲気や家族との関わりを食べています。
そして温かな団らんで得た「心の栄養」によって、「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感を持ち続けることができるのです。自己肯定感は子どもの人間性を形作る基礎となるものです。
ですから、子どもの心が、「おいしい」「楽しい」と思えるような食卓を心がけることが大切なのです。
食事に関わる4つの要素で人間性が形づくられる
なぜ日々の食事が、子どもの心の安定や成長につながるのでしょうか?その決め手となるのが、次の要素です。
食卓を囲むメンバーがいつも同じだからこそ、子どもはリラックスして食事ができます。それと同時に、「今日は元気がないな」「何かあったのかな」など、家族のちょっとした変化に気づきやすくなります。
楽しく食事ができていれば、子どもは食べ終わっても食卓にいたいと思います。逆につまらなければ、その場をさっさと離れるでしょう。食卓で過ごす時間は、家族とのコミュニケーションの量に比例します。
テーブルに座ると、お互いの距離は1メートル程度です。親や兄弟と近い距離で食事をすることで相手の表情やしぐさなど言葉以外のメッセージを受け取りやすくなり、場の空気を読む力も高まります。
食卓につく回数は1日3回以上です。座ったときの雰囲気が良ければ、それだけ「うちはいい」「家族は温かい」と感じる機会が増えます。逆に雰囲気が悪ければ、「うちは苦手」と感じる機会が増すことになります。
家族みんなで和やかに食事をすることは、自己肯定感や自信を育む近道です。「自分はこれでいいんだ」「大丈夫」と思えてこそ、子どもは自ら成長していけます。
子どもは家族と食卓を囲みながら、人の話を聞くことや、自分から話すといった基本的なコミュニケーションの方法を学びます。
それだけでなく、「お父さんは漬物が好き」「お母さんは、ぼくがご飯をこぼすと小さなため息をつく」「お兄ちゃんは怒るとコップをドンと置く」など、家族の行動を見て、人には好みや癖があること、ちょっとしたしぐさには隠された本音が現れているということに気づいていきます。
つまり子どもは、誰に教わるわけでもなく、毎日家族と食卓に座っているだけで、人とつきあっていくために必要なコミュニケーション能力を身に付けていけるのです。人とうまく関われる子にしたいなら、まず家族で食卓を囲みましょう。