多くの親は、我が子にやさしく接したい、ほめて育てたい、叱らないで互いに気持ちよく過ごしたいと思っています。
しかし、実際に子育てをしてみると、子どもはいけないことをしたり、言うことを聞かなかったりして、親が叱らねばならないことも少なくありません。
ただ、やみくもに叱っては、効果がないばかりか、叱れば叱るほど、言うことを聞かなくなる場合もあります。親も、1日中、叱ってばかりで疲れ果ててしまったり、そういう自分に嫌気がさしてきたり、親としての自信を失いがちです。
ここでは、叱らずに伝える魔法の方法について考えてみましょう。
自分のおもちゃに触った子を押し倒してしまうダイくん(4歳)
幼児は言葉の発達が未熟で、相手の気持ちに気付きにくく、心のコントロール力も弱いので、欲求を満たすためにぶったりしがちです。
この特徴を理解した上で、「ダイくんが押しちゃったから、マコトくんが痛いって泣いちゃったよ。ごめんって言おうね」と相手の気持ちに関心を向けさせる言葉がけをします。
すぐに手が出る子は他者から叱られやすいので、叱り言葉に慣れてしまい、叱る人の言葉を聞かなくなります。
このような場合、日頃からほめるようにすると、ほめてくれる人の話をよく聞くようになりますので、「だめー」「やだー」ってお口で言おうと、相手を攻撃しない関わり方を繰り返し、教えます。
それがある程度できたら、「すごいね」「さすがお兄ちゃん」などの言葉で認めてあげると、次第に、その子の自尊心や自信が、自己コントロールにつながっていくでしょう。
スーパーに行くたびにお菓子をねだるアカネちゃん(3歳)
子どもと一緒にスーパーに買い物に行くと、子どもが売り場を走り回ったり、陳列してあるものを触ったり、「買って、買って」とねだることがあります。その場で「走らない」「今日は買わない」と怒っても、止まるどころか走って逃げたり、大泣きすることがあります。
この場合、スーパーに行き、困った行動をしてから叱っても、その効果は低いのです。行く前に「今日は何も買わない」と約束をして、スーパーに入る直前にも「中に入ったら、どうするんだっけ?」と約束を確認し、覚えていたら「さすがアカネちゃんだね」とプライドを尊重しながら、ほめるとよいでしょう。
また、買い物リストを絵や文字で書き、それらの品物を一緒に選ぶなどして、興味や関心をお菓子から遠ざけることで、約束を守りやすくする工夫も必要でしょう。
幼稚園バスに遅れそうになっても、ダラダラしているショウくん(5歳)
大人は目的や効率を考えながら行動します。一人で、子どもは目的や効率を考慮する力が未熟なので、急ぐ必要性も、どうやったら無駄を省けるかも考えず、そのときに関心を持っていることや楽しいことに向かって行動する特徴があります。
そのため、親が子どものために急いでいるのに、子どもがのんびりしていると、親はイライラしてしまうのです。
遅れそうになっても、ダラダラとご飯を食べている場合、「早く幼稚園に行くと、いっぱい遊べるよ。だから、早く、ご飯を食べていこう」などと伝え、急ぐ意識をもって行動できるようにします。
そのためには、前の晩に園のかばんに持ち物を入れておくなど、早く準備できる方法も伝えましょう。また、早く幼稚園に行くために、ある程度、急いで食事や支度をする模範を親が示し、急ぐ行動ができたら、ほめましょう。