教育[725]

母と子どもの適度な距離

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執筆者:門衛 教育運営チーム

母と子の距離というのは、子どもの成長発達にあわせて変わるものです。乳幼児期に必要なときに世話をしてもらい、慰めてもらえて、守られて、誰も自分を傷つけないという安心感があること、そして自分は愛されていて、大切な存在であると感じられると、やがて、自立して人を愛するようになります。

「安心」から「自立」の距離へ

親としての責任は、成長につれて親子のバランスが変化するのに合わせ子どもの自立心と好奇心を育てること。また他者との人間関係を築く能力や人格発達のモデルになることです。身の回りのことができるようになってきたら、少しずつ距離を取って子どもの世界には侵入せず、子どもが自尊心や夢を持って生きていけるようにかかわりましょう。

不安定な親子は、ふとしたきっかけで親子のバランスをくずしてしまうことがあるのです

ケース1 母親に頼られすぎてしまうAさん
小学5年のAさんは、学校から帰ると母親の顔色をうかがいます。夫婦仲は冷え込んでいて、いつも寂しそうにしている母親をかわいそうに思い、慰め役と愚痴の聞き役をやっています。母親もA子さんを頼りにして学校や家のことなど何でも2人で相談して決めるので、父親が家にいなくても良い状況になっています。父親が帰宅すると、母親はリビングから席を立って他の部屋に行ってしまいます。いったい2人の間に何があるのでしょう。

ケース2 母親に何から何までされてしまうB君
小学1年のB君は今でも母親が洋服を着せてくれ、教科書の準備も整えてくれます。B君が自分でやると言っても許してくれません。反抗してもその態度は変わらないので、言うがまま、されるがままで、自分でやる気をなくしています。母親は、まるで2、3歳の子どもを扱うように密着し、依存した育て方をしています。

ケース3 母親が心配で不登校になったC君
「今夜は静かに過ごせるだろうか?お父さんはお酒を飲んで、またお母さんを殴ったりしないだろうか? 明日は学校に行きたいけど、お母さんは家を出ていかないだろうか?」。小学2年生のC君は夏休みが終わった9月から不登校になっています。母親のことが心配で、安心して登校することができないのです。

適度な距離を探そう

生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこした時の母親の気持ちはどんなものでしょう。肌が触れ合うときに感じる命の尊さ、可愛さ、感動は父親には分からないかもしれません。

生まれた直後から「カンガルーケア(素肌で抱っこ)」を通して母と子の距離が一体となるように、愛着が育つようにサポートしている医療関係者もいます。

「抱っこ」という育児行動は人としての愛着や生理的欲求を満足させることはもちろんですが、目を目を合わせてうなずき、言葉で反応していくと、赤ちゃんの情緒を刺激してより豊かな成長を促すことになるのです。乳児期は母と子が一体化した関わりがなければなりません。

生まれる距離は成長の証

1歳半から2歳位になると、子どもは「いやいや」をしたり、自分から欲求を出したり、母親がそれにどう応えてくれるか試したりするようになります。

母親が欲求にうまく応えてくれると、子どもは安心して母親べったりの関係から少しずつ距離を取り、他人と交わることができるのですが、母親が子どものニーズを受け取れずどうしたいのか分からない、ただぐずっているだけと思い、叱ったり手が出たりしてこじれると、子どもも母親から離れようとしません。

母と子の距離の取り方がとても難しい時期です。母親も子どもとの対話に悩み、子育てに行き詰ることもあります。ここを乗り切れば、子どもとの距離も少しずつ取ることができるでしょう。

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