6月24日の英国ショック安からの戻りを試す展開となった翌週の株式市場は、英国FTSEが離脱前の水準を上回って年初来高値を更新し、NYダウも下落幅の9割まで戻しました。
一方、日経平均は5日連続高したものの、24日の下落分1286円の6割弱しか埋め切れず、特に6月は米国雇用統計の悪化や英国のEU離脱というイベントに当事国以上に振り回され、欧米主要国の株価から大きく劣後する結果となりました。
ただ、日本株だけが欧米株のパフォーマンスと大きくかい離している現状は異常であり、その理由が投機筋主導の円買いだとすれば修正余地は大きく、7月は円安・株高への反転相場の起点になる可能性があります。
年初から半年間の日経平均の騰落率は▲18.1%と、英国FTSE △1.9%、NYダウ△2.9%、ドイツDAX▲9.9%から大きく劣後し、世界の主要市場ではイタリアに次ぐ下落率となっています。
さらに、米雇用統計の予想外の悪化や利上げ見送り、日銀の金融政策の現状維持、英国のEU離脱といった大きなイベントが相次いだ6月の1カ月間でも、英国FTSE △2.1%、NYダウ△0.8%、ドイツDAX▲5.7%に対し、日経平均は▲9.6%と際立った下落率となりました。
こうした日本株だけが欧米株のパフォーマンスと大きくかい離し、特に6月に顕著に出ている現状は異常であり、その理由がファンダメンタルズに基づかない投機筋主導の円高だとすれば修正余地は大きいと判断されます。
年初の1ドル120円台から約2割も円高が進行した結果、市場には企業業績の悪化懸念による円高・株安の負の連鎖が広がっている状況と言えます。
ただ、直近のドル円のオプション市場では、深刻な市場混乱の不安が薄れたとの見方を背景に円買いが減少傾向にあり、投機筋も今後円買いの理屈が乏しくなって、ボラティリティが低下すれば、反対売買の動きが活発化すると予想されます。
こうしたなか、日本株回復のシナリオを描くに当たっては、PBR1倍の14500円前後が下値目途の根拠となり、現水準からの下落余地は小さいと考えて良いと思います。
一方、ここからの株高には、投機筋の円買いポジションを円売りに転換させる論理が必要であり、7月の米国経済指標や日米の金融政策がカギを握っていると考えられます。
ここで重要なことは、直近の円高の根拠が、前月の米雇用統計の悪化や英国のEU離脱により、市場に米国の年内利上げ観測が薄れていることにあります。
こうしたなか、FRBが年内の利上げシナリオを維持するには、8日発表予定の6月雇用統計を始めとする経済指標の改善が条件となりますが、足元の経済指標は良好と言えます。
焦点となる雇用統計の就業者増加数も、異常値の可能性がある前月発表の3.8万人から17.5万人の回復軌道に戻るとみられています。
また、米供給管理協会(ISM)の調査では、「回答した米企業の61%が英国のEU離脱の影響はほとんど無視できる範囲内になると予想、年内マイナスの影響が続くとの回答は6%にとどまった。製造業と非製造業の回答に差はなかった。」との報告書を7月1日に公表しました。
こうした良好な米国経済と弱気な市場認識のズレに加え、現状打破に向けての日銀の追加緩和や財政政策への期待が高まる7月は、円安・株高への反転相場の起点になる可能性があります。