[株式投資]ESG投資のメリットと機関投資家の取り組み、日本の関連銘柄は?

ESG投資のメリットと機関投資家の取り組み、日本の関連銘柄は?

2016/01/07

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今回は、「4.ESGのメリットとは?」「5.ESGの機関投資家の取組みと我が国のESG関連銘柄について」について見ていきます。

4.ESGのメリットとは?

まずはESGのメリットを整理します。

ESG投資のメリットをここでは大きく3つに分けて整理します。

①ファンドの運用の視点が長期化しているため、売買回転率(残高に対する組入銘柄の売買金額の割合)が大幅に低下する可能性があります。つまり、コストの低下を通じて長期のパフォーマンスを向上させることができると見られています。
 
②ESGの評価が高い企業は、経営の良さに加えて、ステークホルダー(利害関係者)とのバランスのとれた良好な関係があることから、事業環境の変化で株価が大きく動くときでも中長期的な観点から安心して保有を継続できると予想されます。つまり、短期的な相場に一喜一憂せず(振り回されず)に長期的に投資を行うことができると見られています。
 
③『短期主義(ショートターミズム)』の問題解決につながると言われています。ヘッジファンドやロングショートファンドなど短期の投資家・ファンドの増加や、長期の投資家・ファンドの短期指向化は、企業へのプレッシャーを通じて実体経済に悪影響を与える可能性が高いと見られています。

例えば、企業が短期の株価を意識して、長期的な成長に必要な設備投資や社会配慮のための投資を行わず、短期の利益を優先してしまうことによる社会・経済への影響などが挙げられます。そうしたことからESG投資は、長期投資を促す可能性があり、短期主義問題の解決策の一つと考えられています。 

5.ESGの機関投資家の取組みと我が国のESG関連銘柄について

ここでは参考までに機関投資家によるESGの取組みと関連銘柄について見ていきます。

国連の責任投資原則に署名した年金や運用会社は、欧米を中心に世界で約1400社と言われていますが日本では2015年末時点で30数社にとどまっています。

市場規模では、2014年度の世界のESG投資合計額は21.4兆米ドルと言われ、世界中の運用資産の30.2%を占める規模となっていますが、日本におけるESG投資は80億米ドルで、世界のESG投資額に占める割合はわずか0.04%となっています。
 
<年金基金による取組み>
2015年6月にロンドンで開いた欧米の主要年金などで構成する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークの年次総会では「Gだけで企業を評価するのではなく、EとSの情報も重視すべきだ」など活発な議論が繰り広げられる中、日本の年金約140兆円を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2015年9月28日、国連の「責任投資原則」に公的機関で初めて署名したと発表しました。
 
その他の年金の動向について見てみると、地方公務員共済組合連合会(地共連)は、過去に投資したESG関連商品の運用成績が市場平均を上回ったことから、資産配分を増やす方針と伝えられました。また、公立学校共済組合は、15年度は2商品ほどESG投資を追加し、全国市町村職員共済組合連合会は責任投資原則への署名を運用委託の応募条件とすると報じられました。
 
<運用会社・ファンドによる取組み>
運用会社のブラックロックは、2015年9月30日に「ブラックロック・インパクト株式ファンド(愛称:ビッグ・インパクト)」を設定しました。インパクト投資に着目した先進国株式を主要投資対象とする投資信託で、インパクト投資とは、社会に影響(持続的な社会的インパクト)を与えることを目指す企業に着目し、同時に投資収益を追求する投資の考え方と謳っています。内容としては、ESG戦略を取り入れた個人向けの金融商品で(主に、健康、環境、経営姿勢の観点から企業を選別)、先進国の3700銘柄の中から、独自の評価に基づいて200-800銘柄に投資するスキームとなっています。
 
運用会社のゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントはESG投資および関連サービスを強化することを目的に2015年7月13日、サンフランシスコのESG投資助言会社インプリント・キャピタル・アドバイザーズの買収で合意しました。(インプリントは従業員17人で、5億5000万ドルを上回る資産を運用しています。)
 
国内運用会社最大手の野村アセットマネジメントは2015年末にESG投資の責任者「ESGスペシャリスト」を新設すると報じられたように、ESG投資へ取り組む姿勢をより明確にした形となりました。
 
PE(プライベートエクイティ)ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)は環境課題を市場の力で解決しようと活動している団体 Environmental Defense Fund(EDF) とともに環境ポートフォリオを開発し、対象企業の営業コスト削減を促す取り組みを行っています。また、同じPEファンドのカーライル・グループはEDFと協力し、企業の事業評価手法 Eco –Value Screenを開発し、ESG投資を強化しています。(投資先候補企業における事業改善の余地および環境マネジメントを向上することでどれだけの価値を創造できるかを明らかにする手法)
 
<我が国のESG関連銘柄>
東証は東証一部銘柄を対象に、TOPIX17業種毎にESG銘柄選定を実施しています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のアクティブ運用積極化の対象としても注目されています。

例えば、東京証券取引所グループ(現:日本取引所グループ)では、2012年7月11日にテーマ株の一つとしてESG銘柄15社を公表しました。

選定銘柄として、・アサヒグループHD ・出光興産 ・東レ ・ツムラ・日産自動車 ・アサヒHD ・小松製作所 ・日本電産・KDDI ・大阪瓦斯 ・東京急行電鉄 ・伊藤忠商事・ファーストリテイリング ・三菱UFJフィナンシャルグループ ・リコーリースなどが挙げられます。 

その中で、東京証券取引所グループによる「ESG銘柄」の選定プロセスおよび選定理由について日本電産株式会社を例にみてみます。

選定プロセスとして

① 東証第一部銘柄を対象に、TOPIX17業種毎にESGスコアの高い銘柄を大型株と中小型株からそれぞれ抽出。

② ROE(自己資本当期純利益率)が業種平均以上の銘柄をスクリーニング。

③ ①②の結果、銘柄が複数存在する場合は、ROEが最も高い銘柄を選定。

とし、日本電産株式会社の選定理由として「全世界に通じる製品・技術で社会に貢献し、雇用の安定的拡大と企業の持続的な成長をめざす。環境性能に優れたモーターの開発・供給を通じて、環境負荷低減に取り組むほか、グローバル人材の採用・育成にも注力している。」としています。

*上記のコメントは筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する会社または組織の見解ではございません。また個別銘柄の推奨、商品の投資勧誘を目的としたものではありませんのでご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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