刻一刻と歯医者に連れて行く時刻が迫っています。いつまでもおやつを食べている我が子・・・「さっさと食べてしまいなさい!もう出かける時間よ!」ところが注意は右耳から左耳へ・・・急いで食べる気配なし。予約時刻はどんどん迫ってきます。
「じゃあ自転車の後ろで残りは食べなさい!」とビニールにおやつを入れて大慌てで玄関を出ました。
刻一刻と幼稚園に登園する時刻が迫っています。いつまでも、おもちゃを片付けない。
「早く片付けなさい!遅刻しちゃうじゃない!」「さっさと片付けてよ!何度言ったらわかるの!」ところが注意は右耳から左耳へ・・・・全く片付ける気配なし・・・
「全く、どうしていつもこうなの!」と文句をタラタラ言いながら結局はお母さんが片付けるはめに。子どもの計画通りに事は運びました。
子どもはだらだら食べていても自転車の後ろに乗って残りを食べられる、自分で片付けなくてもお母さんが片付けてくれるとちゃんとわかっているからです。
「さっさと食べてしまいなさい」と注意したのにも関わらず、ダラダラといつまでも食べていればおやつを取り上げる、「おもちゃを片付けなさい」と言って手を出さなければ“過干渉”にはなりません。
でも、残りは自転車の後ろで食べればよいと考える、おもちゃを親が片付けてしまったことが “過保護”、そしてせっかく子どもに注意した行為は最終的には“過干渉”に変化してしまったのです。過保護と過干渉はセットになりやすく仲が良いのです。
同じような例は日常生活でゴロゴロしています。
●子どもが小学校に登校しました。床にノート。大慌で学校に届けるお母さん
●子どもがおもちゃを投げました。「どうして投げるの、ダメでしょ!」と叱りながらおもちゃを拾っているのはお母さん
●子どもが服を脱ぎ散らかしている。「なんで、そのまんまにしておくの!」と怒りながら畳むのはお母さん
●玄関に靴が散乱している。「どうしてちゃんと靴を揃えないの!」と文句を言いながら靴を揃えるお母さん
●いつまでも起きてこない我が子、小学生になっても「早く起きなさい」と親が起こしている。目覚まし時計をセットして起きることを教えていない。高校生になってもこれが続く
過干渉に口やかましく注意するけれど、「歯医者の予約時刻が迫っている」「散らかっている、私が片付けた方が早い」「寝坊して遅刻する」と目先のことに囚われ、「忘れ物をして子どもが可哀想」「遅刻して先生に叱られたら可哀想」と子どもが困らないようにと先回りして手を出すのは過保護。
“助長”という言葉を知っていますか?「間違った薬選びは却って健康を損ねる」を「間違った薬選びは却って健康を助長する」などと悪い意味でも使います。
“助長”の由来は、
宋の人で苗の成長が遅いのを心配しているものがいたそうです。彼がへとへとになって帰ってきて言うには「今日は疲れたよ、(ひっぱりあげて)苗が伸びるのを助けたんだ」。その話を聞いた息子があわてて見に行くと、苗は枯れていた。
という孟子の故事から不必要な力添えをして、却って害すること。“苗の成長を助ける”ということから“助長”ということばが生まれました。
「私が毎日、子どものためにこれだけ言っているのに、どうしてこういつまでも自分のことを自分でやるようにならないのかしら?」と悩んでいるお母さん。その原因はひょっとしてお母さん自身の行動にあるのかもしれませんよ。
子どものために良かれと思って過干渉に口を出していること、困らないようにと先回りして過保護に手を出すことは子ども自身で伸びる力を損ねます。宋の助長してしまった男の人にように、却って子どもの芽を摘むことにならないようにしたいものですね。
肥料をやった後は成長をじっと見守ることです。
つまり子どもが気が付くように「出発時刻が迫っている」「靴を脱ぎ散らかしている」という言葉はかけても、手や口を出さないことです。つい子どもが困らないようにという愛情からやりたくなる気持ちはよくわかりますが、そこのところは子どものためにグッと堪えましょう。「助長さん」にならないようにしましょう。