子どもを伸ばすママは、子どもの反応よりもゆっくりと動きます。
たとえば、子どもが泣き出してもすぐには駆け寄らず「あの子は、どうするのかなあ」としばらく見てから動きます。
子どもよりもゆっくり動くのは子どもをよく見たいからです。実際、そういうママは家での子どもの様子をよく話すことができるでしょう。よく見ているから細かく話せるのです。でも、何かにつけ先回りして動いてしまうママは、先回りするから子どもの様子が見えません。
鉛筆を家に忘れたまま登校したのを知っても届けないママがいました。帰宅した子が、「ママ、鉛筆忘れちゃったよ」と言うまで待っているのです。子どもが切り出して、初めて「そういえば、そうだったね」と答えます。鉛筆を忘れたその子は、先生に鉛筆を借りたそうです。自分で考えて行動できました。
すぐに届けてしまっては、子どもが自分で考えて行動する機会が奪われてしまいます。
子どもをよく見るママは、子どもの話をよく聞くママでもあります。子どもが自分から言い出すのを待って、子どもの話をよく聞きます。ママに話を聞いてもらっている子は、ママの返事を待ちます。待って聞くということが自然にできるようになります。
ママがよかれと思ってしていることが、子どもの問題を引き延ばしたり助長したりしていることがあります。
ママが先回りすることで「聞かないでもすむ習慣」をつくっているかもしれません。自分が聞いていなくても、ママはやってくれるとなれば聞きません。
何回も同じことを言うママは少なくありません。1回言っただけでは、子どもは聞いてくれないと思っているのでしょうか。何回も同じことを言うよりも、1回聞いてすむような伝え方をしましょう。
「聞く」と「行動」するはセットです。1回で聞けるようになるためには、子どもがいま聞ける状態かどうかを見極める必要もあります。ママの気分次第で言うのではなく、子どもをよく見て伝えることを心がけていただきたいと思います。
何回同じことを言われても聞けない子の場合、聴覚に問題を抱えていることもあります。大人は雨が降っていても、電車が走っていても、聞きたい音や声だけに集中できます。でもそれができない子がいます。すべての音が同じ音量で耳に入ってきてしまうのです。
学校の聴覚検査でもすりぬけてしまいますから、聞けない理由が理解されないままです。
このような子どもには、ほかの子と同じように聞くためのトレーニングが効果的だそうです。トレーニングは、読み上げた数字や言葉を書いていくというものです。家庭でもできます。家庭で行う場合は親子で楽しむゲームくらいにとらえてください。
読み上げた数字や言葉が正確に書けていないと、子どもはそこで初めて聞けていなかったことに気づきます。そうして、次から集中して聞くようになるのです。多動でしゃべらずにいられない子どもの場合は、床に寝かせて体を落ち着かせるところが始めてください。
トレーニングの初めはドアが開く音がするだけで気になって集中できなかったのに、「気にしないで、(ドアのほうに)振り向かないで」と言い続けているうちに気にしないですむようになるそうです。聞くトレーニングが同時に自分で自分をコントロールするトレーニングにもなっているわけです。
何度も同じことを言う前に、わが子はなぜ聞けないのか、一度振り返ってみてください。大切なのは子どもをよく見ることです。