[社会保障]【労災保険】遺族補償年金の転給について

【労災保険】遺族補償年金の転給について

2015/02/23

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国民年金保険や厚生年金保険とは異なる労災保険の遺族年金

労災保険の遺族補償年金には、厚生年金や国民年金の遺族年金とは異なる大きな特徴があります。それは、転給があることです。厚生年金や国民年金による遺族年金は、最先順位の受給権者が死亡したり、婚姻したり、20歳に達したりして受給資格を失うと、遺族年金はそこで打ち切られます。

しかし、労災保険の場合には、最先順位の受給権者がその受給権を失っても、次順位の受給権者がいれば、その受給権者に対して遺族年金が支払われます。そして、その受給権者も受給権を失った場合、その次の順位の受給権者がいれば、その者に遺族年金が支払われます。

こうして、遺族補償年金の対象となる被災労働者の死亡当時、遺族補償年金を受けることができる遺族(受給資格者)全員が、リレーにおけるバトンタッチのように、先順位の者から次々に受給権者となり、最後の受給権者が失権するまで、遺族年金を受けることができます。

遺族補償年金の受給資格者について

転給を考える際には、まず、遺族補償年金の受給資格者という概念を把握しておく必要があります。遺族補償年金の受給資格者とは、被災労働者の死亡当時、その被災労働者によって生計を維持されていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。

生計を維持されていたとは、対象となる者が、被災労働者の死亡当時、被災労働者の収入によって消費生活の全部又は一部を営んでおり、死亡した労働者の収入が無ければ、通常の生活水準を維持することが困難な者が該当します。

また、被災労働者の妻は無条件で受給資格者になりますが、それ以外の者については、年齢要件や障害要件が課されています。まず、夫、父母、祖父母については、被災労働者の死亡当時55歳以上又は一定の障害者でなくては受給資格者とはなれません。

また、子や孫については、18歳年度到達前であるか一定の障害者でなくては、受給資格者とはなれません。兄弟姉妹については、被災労働者の死亡当時18歳年度到達前若しくは55歳以上又は一定の障害者でなくてはなりません。

受給資格者の順位について

さて、遺族補償年金は、受給資格者の中で最先順位の者が受給権者となります。この順位は、①妻②60歳以上又は一定の障害者である夫③18歳年度末到達前又は一定の障害者である子④60歳以上又は一定の障害者である父母④18歳年度末到達前又は一定の障害者である孫

⑤60歳以上又は一定の障害者である祖父母⑥8歳年度末到達前若しくは一定の障害者又は60歳以上の兄弟姉妹⑦55歳以上60歳未満の夫⑧55歳以上60歳未満の父母⑨55歳以上60歳未満の祖父母⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹となります。

なお、受給権者となるには、被災労働者の死亡当時、被災労働者の収入でその生活を維持していた必要があります。ですから、年齢要件や障害要件を満たしていても、その者が被災労働者によって生計を維持されていなければ、遺族年金の受給権者とはなりません。

受給権の失権事由について

さて、受給権者は次のいずれかに該当した場合には、受給権を失います。それは①死亡したとき②婚姻した時③直系血族又は直径姻族以外の者の養子となった時④離縁によって被災労働者との血縁関係が終了した時⑤子・孫・兄弟姉妹が18歳年度末に到達した時⑤障害を理由に受給権者となっていた者の障害の状態が回復した時です。

転給の仕組みについて

さて、受給資格者のうちの最先順位の者が遺族補償年金を受けとります。その受給権者が上記の失権事由に該当すれば、受給権を失います。しかし、遺族年金はここでは打ち切られません。今度は、次順位の受給資格者が受給権者となり、遺族年金を受給します。さらに、この受給権者が失権事由に該当し、受給権者でなくなったとします。

すると、この者の次の受給資格者が受給権者となります。これを繰り返して、最終的に受給資格者の全員が遺族年金を受け取るまで、遺族年金の給付は続きます。これは、厚生年金や国民年金の遺族給付に比べて、相当に手厚い補償といえましょう。これが転給の仕組みです。

ですから、4世代同居の家庭で、労災事故により一家の大黒柱がなくなった場合には、孫や祖父母までが労災保険の遺族年金を転給により受けることができます。一家の大黒柱がなくなることは大変不幸なことです。しかし、その死亡が労災事故による場合には、その遺族は手厚い保護を受けることができます。

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